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日本市民の正常な参政権理解


 六月三日にスタートした青年会の全国巡回キャラバン隊が十二日に活動を終えた。同キャラバン隊は、定住外国人の地方参政権付与を中心に地方自治体職員採用時の国籍条項撤廃を広く日本市民に理解してもらおうと、全国各地の街頭でアピール文書を配布するものだった。

 キャラバンのスタート前、青年会もどれだけの日本市民が理解してくれるのかという不安もあった。しかし、いざふたを開けてみると当初の不安を吹き飛ばすほど多くの市民の理解を得られたという充実感をもったという。


「日本生活者には当然」の声

 皮切りの仙台をはじめ各地でキャラバン隊を励ます市民の声が相次いだ。「日本生まれの人たちには選挙権があっても当然」「すでに日本で生まれ日本で生活している人は民団も総連も関係なく地方参政権を持つべき」「参政権、あげるべきだ」と性別、年代を問わない支援の声がとどいた。

 これら市民の声は、日本で生まれ、日本で育ち、日本で生活しているのだから地方参政権は与えられてしかるべき、という感覚から出されている。これはとりもなおさず永住外国人の生き方そのものであり、九五年の最高裁判所判決と同じ趣旨である。このように日本市民が正常な感覚を持っていることを頼もしく思う。

 かたや日本の政界はどうか。永住外国人への地方参政権付与に対して日本の政党の大多数は、肯定的だ。民主党は地方自治は住民自治が基本であり、自治体は国籍のいかんを問わず住民参加の様々な手だてを講じる必要がある、と表明している。また、公明党、社民党などほとんどの政党が永住外国人への地方参政権付与に積極的な姿勢をみせている。


問題は日本の主要政党

 だが、一部主要政党は「原則認めないが、実施面、法制面を含め慎重かつ十分な論議が必要」といまだ及び腰だ。地方自治の本質が地域住民自治にあるとする多数の政党の論理に対して、明確な反論は見られない。

 国際社会を見たとき、国際人権規約をはじめとする内外人平等を求める人権尊重意識が潮流となっている。また、日本においても地方自治は、地域住民が基本構成員であるとの認識が十分醸造されている。このような潮流で、永住外国人への地方参政権付与を認めることは、国際社会の中で日本の地位を押し上げることにもなろう。

 私たちが求めているのは、民主主義の多数決による採決だけではない。永住外国人が日本市民と共生していける社会を実現したいと考えている。その一つの現れが地方参政権なのである。主要政党が一日も早く、永住外国人への地方参政権に理解を示してくれることを望まざるを得ない。


コンセンサスは「付与」に

 キャラバン隊に声援を送った日本人市民は、地域住民であり地方自治への参画者だ。その参画者自身が「永住外国人に地方参政権を」という認識を持っている。大阪の街頭活動では、日本の商店街が協力を申し出た。神戸でも青年たちの訴えに真剣に聞き入ってくれる市民がいた。その多くが地方参政権に深い理解を示した。

 参政権の付与を求める地方議会の意見書採択はすでに千三百六十議会に達している。このような状況を考えるとき、日本社会のコンセンサスは確実に永住外国人への地方参政権付与を認めつつある。いまこそ、全力を挙げて地方参政権の立法化に取り組む機会だといえよう。

(1998.7.15 民団新聞)



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