民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
出頭拒否は当然、圧制への抵抗権

指紋押なつ拒み逮捕の尹さん


報告集会で支援者を前に
心境を語る尹昌烈さん


最高裁弁護人陳述始まる

 指紋押捺拒否を理由にした逮捕の不当性を認め、原告・尹昌烈さん(42)に損害賠償の支払い命じた大阪高裁判決を不服として国と京都府が上告していた「損害賠償請求事件」は十七日、最高裁第二小法廷(大西勝也裁判長)で口頭弁論を開き結審した。最高裁が口頭弁論を開いたことで原判決は見直される公算が大きいだけに、原告側弁護団では二百人の代理人を立てて大阪高裁判決の支持を訴えた。

 口頭弁論での争点は指紋押捺制度、及び損害賠償の是非の二点。最高裁では併合して審理された。国・京都府の代理人はそれぞれ、尹さんに対する強制捜査を「罪証隠滅の恐れがあった」として正当化、外登法違反は「軽微な犯罪ではない」と、逮捕状の発布さえ違法とした大阪高裁の判断を否定した。

 これに対して、原告弁護団は指紋押捺制度が永住・定住者に対しては九三年一月に廃止されたことを挙げ「制度自体に合理性と必要性が無いのは明らか」と国側の論理矛盾を突いた。しかも、尹さんは定住外国人として居住・身分関係は日本人同様はっきりしており、八七年の逮捕当時、「指紋拒否の事実を認めるし、逃げも隠れもしない。詳細は法廷で述べる」と繰り返してきた。それだけに弁護団は憲法一四条の平等原則を盾に逮捕の違法性を強調、「(上告人は)さまつな論点で挙げ足とりをしている。原判断を覆せるものではない」と司法による救済の必要性を訴えた。

 最後に陳述した金敬得弁護士は、日本に永住・定住している在日韓国・朝鮮人はもともと日本国籍があったのにもかかわらず、外国人登録令公布に際して「当分の間外国人」とみなされたまま今日にいたっている事実を挙げ、尹さんの出頭拒否を「圧制や悪法への抵抗権の行使であり、当然のこと」と弁護した。

 口頭弁論終了後、弁護士会館で開かれた報告集会で尹さんは「ようやく出口が見えた」と、十三年間にわたる孤独な裁判闘争に一応の決着がつくことにほっとした表情を浮かべていた。しかし、一度は逮捕され、犯罪人の汚名を着せられただけに、判決結果いかんでは家族にまで累が及ぶのではないかと心配している。

 指紋押捺制度について最高裁は九五年十二月、「外国人の公正な管理」を目指した外国人登録法の立法目的を認め、合憲判断を示した。しかし、外国人の治安管理の一環として制度の導入を図った当時とは社会情勢も大きく変わっている。特に在日韓国人は日本に定住し、日本人と変わらぬ生活をしていながら、いまなお制度を残すことが適切と考えるのか。最高裁の判断が問われている。

(1998.7.22 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ