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母国訪問団は民族事業


 一九七五年から実施し始めた朝鮮総連同胞を対象にした母国訪問団事業(墓参団)が四半世紀近くを数え、このほど民団では全国の同事業担当実務者を集めた「実務者推進会議」を開いた。

 祖国分断以来、電撃的に実現した一九七二年の「七・四南北共同声明」を契機に、内外で南北離散家族再会の実現を叫ぶ声が高まった。

 朝鮮総連同胞は「朝鮮」籍といえども、民団員と同じ歴史的経緯で渡日した。当然そのほとんどの故郷は南側(韓国)であり、肉親や親戚ともその故郷で生き別れになっている。

 民団が推進してきた同事業は、せめて朝鮮総連系の在日同胞だけでも、離ればなれになった肉親との再会を実現し、あくまでも「同胞の情愛」を分かち合うことを目的に実施したものだ。二十三年間、休むことなく継続展開し、これまでに五万人を超える朝鮮総連系同胞が数十年ぶりに故郷の土を踏み、感動の再会というドラマを生み出した。


時代に見合った企画展開へ

 事業開始当初、参加者のほとんどは数十年ぶりに故郷の土を踏むという一世世代が占めていた。しかし、ここ数年来、在日同胞社会の世代交代が進み、参加者は初めて父・母、祖父・祖母の国を訪れるという二・三世の参加に移り変わった。

 このほど開かれた「実務者会議」では、当初の「生き別れになった肉親との再会実現という目的は十分に果たされた。世代層の移り変わりを直視し、今後は時代に見合った内容に変化させていくべきだ」との意見が出された。

 まさにその通りであろう。これまで二十三年間、訪問パターンがほぼ同内容のツアーであり、企画のマンネリが否めない。

 母国訪問団は現在、春の「寒食」、秋の「秋夕」の年二回をメインに、全国レベルで実施している。今後は地方レベルによる小規模ツアーが望まれる。

 若手世代だけで訪れる「青年ツアー」もよかろう。女性を対象にした料理・文化・歴史探訪などの「お楽しみツアー」も魅力的だ。また、青年実業人を対象にした「ゴルフツアー」など、対象や企画に変化を持たせた気軽な「訪問団」が望まれる。


思想超えた民族的事業

 今年は韓国が八月十五日、北韓が九月九日に、そろって政府樹立五十周年を迎える。これは言い替えれば南北分断固定の半世紀でもある。

 祖国には親、兄弟など南北に生き別れになった離散家族が一千万人を数えると言われる。そのほとんどは再会を果たせないままであり、年々高齢化が進んでいる。

 東西冷戦は終焉したと言われるが、南北離散家族はその「犠牲」であり、分断の悲劇と苦痛は今もなお続いている。

 二十世紀もまもなく幕を閉じようとしているが、せめて「犠牲者」の心を癒す離散家族再会実現の道を開いてほしい。

 思想を超えて人道的立場から始められた本団の母国訪問団事業は、未だ故郷の地を踏めぬ朝鮮総連系同胞が一人でも残る限り、継続しなければならない、いわば民族的事業でもある。

 今年は多くの要素を含めた節目の年であり、有意義な「母国訪問団」の年になることを願いたい。そして、一人でも多くの「肉親再会」と「故郷訪問」が実現するよう期待を膨らませたい。

(1998.7.29 民団新聞)



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