民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
大韓民国政府半世紀

政府に臨む在日同胞の声



■ルーツ確認し感動の祖国に
姜在彦・花園大学文学部教授(72)

 在日同胞の九五%が日本生まれの世代である。この世代の大多数は、たとえ言語や生活文化が日本化したとはいえ、自国の国籍を固守して生きている。五百万余りの在外韓国人の中でも例がない。
 ルーツを求めて訪韓した彼らの中には、なぜ韓国人が韓国語を話せないのかと問いつめられ、再び恥をかくまいと祖国離れするケースが多い。日本で生活するためには、日本語こそが必要な言語であって、「民族意識」だけで母国語に熟達することは容易でない。むしろルーツを求める彼らに、自分にも祖国があったという感動を与え、それが祖国を学ぶきっかけになるような祖国であってほしい。


■大きな節目…国造りの日に
金両基・静岡県立大学教授(65)

 八・一五を迎えるたびに「民族と国家」が思い浮かぶ。独立してから四八年の建国の日まで、民族はあったが国はなかった。「帰化」問題が話題になっている昨今、わが民族が無国籍だったその三年間が心に浮かび、在日である自分にとって民族と国家のどちらがより重要であるかに熟考を重ねている。
 李承晩大統領時代、未来を展望する政治家がいたなら、朴正煕大統領の在任期間が数年短かったら、間違いなく国造りは変わっていた。私心を超えたところの「ハンマウム(一つの心)」が八八ソウルオリンピックを成功させ、韓国の存在を世界にとどろかせたことを想起して、大きな節目の国造りをはじめる日にしよう。そのための在日が積極的に参加できる環境づくりをはじめよう、と自分に言い聞かせている。


■地道で健全で透明性の祖国に
金哲雄・在日韓国新聞協会幹事社代表(55)

 人間に例えれば、五十歳は壮年世代であり熟年である。その本国が「動乱以来最大の試練」という経済危機に陥り苦闘している。
 光復節を期に政治、経済、文化、社会など全般にわたる第二の建国の理念を掲げ、「権威主義からの脱皮、民主主義への移行」が合い言葉という。
 在日韓国人は今、地方参政権獲得運動と日本版ビッグバン実施で、全国「商銀」は合併、再編・統合と生き残りをかけ頑張っている。この双方がかみ合ってこそ、在日同胞社会は彼の地で永続して生きられる。
 「迷ったら原点に戻れ」ではないが、地道で健全で透明性のあるイメージが日本に伝わってこそ、われわれも肩身が広く運動がやり易くなる。第二の建国を境に、なぜこの権利獲得運動が必要なのか、を真剣に考え直す機会である。在日も本国も「身の丈」に合った生活態度でもある。


■統一問題が最優先課題
ペ重度・川崎市ふれあい館館長(54)

 現在の韓国はIMF体制を含め厳しい状況に置かれている。五十年を期に政治、経済ともに国自体が真に自立できる基盤を持たなくてはならない。統一問題も最優先課題として取り組むことが望まれる。祖国がはっきりとした姿勢を見せることで在日同胞も夢と希望を持つことができる。
 また、韓日の歴史の問題はあるが、日本文化を流入を閉ざしてきた閉鎖主義は大きなマイナス。実りある文化交流を望みたい。


■在日の歴史を知ってほしい
呉徳洙・映画監督(56)

 建国五十年を迎えるという。一方「在日」は一九一〇年の日本国家による植民地支配から数えて今年で八十八年にもなる。この一世紀近くにも及ぶ「在日」の歴史、特に解放からの五十年の歴史について本国政府と国民がどの程度の認識を持っているのだろうか?
 現在、映画「在日」の全国上映が進んでいる。「日本に来て在日と付き合ってみて、国で学んだ事とだいぶギャップを感ずる」。上映会で知り合った留学生からよく耳にする言葉だ。


■同胞地位向上さらに進展を
金敬得・弁護士(49)

 憲法裁判所に在日韓国人による二件の憲法訴願が係属している。在外国民の国政参政権と戦後補償問題である。国政参政権は、日本に海外選挙区を設けて一人一票の原則により在日の代表を本国に送れるよう一日も早い実現が望まれる。
 韓日請求権協定が署名されて三十年以上、在日の戦後補償は放置されてきた。政府を信じて帰化せずに補償を求め続けてきた在日に対する責任があるはず。この二つの問題で在日の声を聞き入れることが植民地支配の克服につながる。


■在日の統一を一日も早く
全在紋・桃山学院大学教授(51)

 金大中大統領によれば「統一は急ぐべきでなく、今は南北の平和と共存を追求すべき時」とされた。しかし、在日同胞の「民族教育」について言えば、祖国統一は遅延すればするほど、いたずらに朝鮮総連系同胞子弟を日本学校に放流してしまう結果を招来しよう。
 統一は本国よりも日本において急がれる。もし、在日のイニシアティブのもとで統一的作業が先行試図される時、南北両政府はそれを尊重されたい。

(1998.8.15 民団新聞)



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