民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
総連は「在日」の立場に立て


 総連中央指導部は最近、機関紙朝鮮新報の一面全段をさいて民団と韓国政府を誹謗し同胞社会の敵対意識を煽り、同胞間の離間と民団と韓国政府との間にくさびを打ち込もうとやっきになっている。

 この時期に何故、総連指導部は同胞社会内部に対立と敵対雰囲気を醸し出すような愚挙に出たのか、同胞社会でさまざまな憶測を呼ぶのも当然のことであろう。

 第一に考えられることは、五月に開催された第十八次全体大会で新体制となった総連指導部が、今後の指導体制を確立する上で内部引き締めを図ろうとする一環だということだ。

 大会では、金正日思想で在日同胞社会を固めるとの現実離れした方針を採択したが、民団との対立を煽ることで組織固めを図ろうとしているのではないか。


総連同胞、参政権に共鳴

 第二には、組織防衛の観点からと見ることができる。年間五千人以上もの組織離脱者を出している現状を何とかくい止めたいとの焦りと、民団が強力に推し進めている地方参政権獲得運動に総連同胞の大多数が共鳴していることへの危機感もあろう。

 三番目には、民団と新たに就任した金大中大統領率いる韓国「国民の政府」との離間を図ることが考えられる。在日同胞社会に政治的策謀を持ち込み、民団内部の撹乱を図ろうとするものであろう。

 総連指導部は、民団中央団長の統一問題に対する発言や地方参政権獲得運動ばかりでなく、金日成・金正日思想を一方的に押しつける民族教育に民団が反対しているなどと、激烈な表現で非難を行っている。

 このような民団攻撃が、現在の在日同胞社会に何らの利益をもたらさないことは自明のことだ。冷戦構造時代ならいざ知らず、二十一世紀を目前に同胞和合の必要性が叫ばれている今日にあって、同胞社会に対立を生み出し敵愾心を煽るような愚かな行動を大多数の同胞は冷ややかな目で眺めている。

 在日同胞は同じく被植民地支配の歴史的体験を持ち、日本社会での強い民族的差別のなか、それこそ血の滲むような努力の末に今日の生活基盤と社会的地位を築き上げてきた。そこには民団だ、総連だという区別はなく、今後も同じく日本で生業を営む「生活者」としての「在日同胞」の姿と立場がある。


同胞社会統一にうねりを

 本国の分断状況とは別に在日同胞が交流を深めることで和合し、祖国の統一に向けて大きなうねりを作り出すことを私たちは望んでいる。このような考えから民団は総連に対し交流を積極的に提起してきた。

 民団の基本姿勢は明確だ。総連との交流を通じて和合の雰囲気を醸成していこうとの民団の方針は一貫している。総連さえその気になれば地方参政権の問題にしろ、民族教育、統一問題などあらゆる分野で対話が可能であるし、非政治的・人道的分野での交流はすぐにでも実現可能である。

 同胞社会の対立を選ぶか和合の道を選ぶかは総連指導部の考え次第である。祖国分断から半世紀が過ぎ、二十一世紀に向かって新たな地平を切り開こうとする今日、総連中央は「在日同胞」の立場に立ち、祖国と同胞社会の統一実現を目指していくべきである。

 総連指導部は、これ以上同胞社会に意図的に対立を醸成したり、分裂を助長させることのないよう全在日同胞に代わって厳重に警告するものである。

(1998.8.26 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ