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韓日新関係の大きな契機に

金大中大統領、10月に公式来日



東京・大阪で同胞と懇談会

 金大中大統領の日本公式訪問が、来る十月七日から十日までの三泊四日にほぼ決まった。民団では空港での歓送迎をはじめ、約千人規模の歓迎レセプションを開く準備を進めている。会場は東京と大阪の二カ所になる予定だ。

 大統領としての日本公式訪問は史上初めてで、IMF体制下で経済再建に全力を尽くす本国と在日同胞との共同歩調を確かなものにすると同時に、二十一世紀に向けた新しい韓日関係の大きな契機になるものと同胞社会は強い期待を寄せている。

 大統領を迎える民団の歓迎レセプションは、九四年三月の金泳三前大統領以来のこと。建国五十周年に当たる今年の光復節記念式典で、「第二の建国」を強調した金大統領の初の訪日に寄せて、在日同胞社会の各界各層に期待を聞いた。



新しい友好にふさわしい在日同胞の処遇改善を
各界同胞が期待の声


◆河正雄・在日韓国人文化芸術協会会長(58)

 わが国には素敵な挨拶がある。アンニョンハシムニカ(安寧でありましたか)。その用語には相手を思い労りあう心が宿っている。人生の目的は地位や名誉や物質を求めることでないはずだ。心や人格を高め、心安らかにしたいと願っている。国づくりにおいてもその心は重要な精神であると思う。韓日関係において、友好と相互理解を深め信頼を築くためには文化交流の重要性は言をまたない。しかし、国民感情による合意の錦のために慎重かつ警戒的で決して安寧なる関係でない。今や欧米先進国は国益の垣根をはずして果敢なる文化戦にチャレンジしているではないか。

 我々は世界に誇る固有の伝統文化を育んできた。我々らしさの文化を世界視野に立ち、堂々とアピール発展させることこそ世界に貢献できると信じている。文化大統領を歓迎し期待を込めたい。


◆李仁夏・川崎教会元老牧師(73)

 「過去の問題の清算」が焦点のひとつとなるようだが、日本の「援護法」の対象から除外されている在日同胞戦傷元軍属のこともきちんとしてほしい。そもそも、在日同胞戦傷元軍属が日本の「援護法」の適用から除外されているのは、韓日請求権協定に対する両国の解釈上の違いから出てきている。こうした場合、韓国政府は同協定三条に基づき仲裁要求を発動するのが筋。ところが、これは伝家の宝刀を抜くに等しい。韓国政府にはその考えがないとみえたため六月に憲法裁判所に提訴した。

 期限は三カ月なので遠からず判決が出る。もし、韓国政府の行政不作為となれば、金大中大統領にゴーサインを出してほしい。国民と政府と大統領府が一致すれば勝てる。こういう正義の問題では、韓国の政府に強くあってほしい。アジアの連帯なくして日本の平和もない。日本のためにも毅然たる外交姿勢を望む。


◆呉忠根・帝京大学教授

 金大統領が唱える、可能な限り北の同胞を援助するという「太陽政策」には、基本的に賛成である。鄭周永・現代グループ名誉会長の率いる、牛五百頭を積んだトラック行列は感動的だった。他方、政府は繰り返される北のセン水艦侵入事件のような安保侵害に対して、責任の所在と再発防止約束など、きちんとメリハリをつけるべきだ。それを伴わない「太陽政策」は統一に資しないと思う。

 四十年前北に渡った日本人妻の「里帰り」が実現した。(現在中断)。同じく北に行った十万人を超える在日同胞の日本訪問も、法律・政治以前人道問題として、その実現に努力するよう望みたい。この人たちの、一度日本に戻って親族に会い、先祖の墓参りをしたいと願う気持ちは、日本人妻たちと変わるまい。韓日両国は人道的責務として、国際政治の谷間に置き忘れたこの人々に光をあてるべきである。


◆姜誠・ルポライター(40)

 二十一世紀の新しい韓日関係をつくる歴史的な訪問と位置づけている。金大統領は過去の歴史認識の問題や日本文化解禁など、対日関係の改善に強い意欲と覚悟を示しているが、それを受け取る日本側との間で温度差を感じる。打たれた側が大きなアクションをとろうとしているのだから、打った側の日本政府もしっかり大統領の決意を受けとめてほしい。

 在日同胞の問題では、国籍条項を撤廃して地方公務員の採用を拡大し、管理職への登用も視野に入れて前進する契機になればと思う。地方参政権については、「権利が制限されている韓国人がかわいそうだ」という考え方ではなく、日本の政治、社会的システムをどう定住外国人に開放していくかという視点でとらえるべきだ。歴史的訪問で新しい韓日関係にふさわしい在日同胞の処遇を望む。

(1998.8.26 民団新聞)



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