民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
朝鮮学校の行く末憂う

教育者中心に内部から声高まる



「在日」の共有財産守れ
総連の私物化に抗議
民団同胞にもアピール

 「朝鮮学校」というと、一般的にどういうイメージを持つだろうか。ある人は在日同胞が日本で民族主体性を堅持して生きていくのに、必要な民族学校と言うかもしれない。そう信じたい気持は理解できる。しかし、実態はどうか。

 聞くところによれば、生徒数が年を追って激減し、学校運営ができないという。また、これまで掲げていた金日成、金正日父子の写真を父兄が引きずりおろすよう要求し始める事態も起きているという。

 これは「民族教育」の看板とは裏腹に、金父子への忠誠強要がついに同胞父兄をして「朝鮮学校」離れに踏み切らせたということだ。朝鮮総連は総連同胞を「共和国」の海外公民と言うけれど、実態は日本生まれ、日本育ちの在日二、三世以降の世代が、「共和国」に帰国しようとするだろうか。

 民団であれ、総連であれ、在日同胞の実態は「在日」をどう生きるか、そのためにどういう環境を日本に築くかに尽きる。実態を無視した総連組織のあり方が、総連離れに拍車をかけているという現実に向き合わなれば、総連の行く末は火を見るより明らかである。

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 「在日朝鮮人子弟の民族教育を考える懇談会」という団体からこのほど民団同胞に訴えるアピール文が届いた。同会は九七年十月十日、朝鮮総連の元、前、現職の教職関係者、父兄、卒業生有志により、設立趣意書(第一号)を発表し、今日まで臨時号を含めて第四号まで会報を出している。

 今回のアピール文では、運営困難に陥った総連系民族学は統廃合されたり、朝銀などに数十億、数百億円単位で担保として提供され、不良債権と化していると指摘。生徒数の減少については、その原因は金日成王朝一族の独裁政治、神格化、個人崇拝、思想偏向教育にあり、子弟の未来を金正日将軍のために命さえも捧げる革命戦士として教育されることを同胞は望んでいないと断定している。

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 アピール文はさらに、現存の教育施設、総連系諸機関の資産は総連の私有財産ではなく、戦後、諸先人達の血と汗と涙の結晶であり、後世に残すべき遺産であるとして、在日同胞の財産を守る運動に協力を、と呼びかけている。

 「民族財産を総連に食い逃げされてはならない。させてもならない」と強調しているのである。

 日本の植民地支配から解放された一九四五年の「光復節」からすでに五十三年が過ぎた。解放直後、日本当局の差別や蔑視と闘い、同化、帰化の不当な政策を跳ね返すため在日同胞は思想、信条を超越し、団結して今日の財産を築いた。民族学校は民族の矜持と誇りを守る拠点であった。

 ところが、一九五五年に金日成の指示で北一辺倒へと路線が転換し、五九年から始まった北送人質作戦が、総連を物言わぬただの「共和国」の御用団体へと転落させてしまった。

 主体思想の元締めであった黄長ヨウ書記が韓国に亡命して以来、朝鮮籍から韓国籍への国籍変更が急増している。現在、在日同胞七十万の約七五%(五十二万五千人)が韓国籍であり、残る十八万人は北送された十万人余との間の三親等に繋がる肉親の情愛のために現在苦しみ悩んでいる。

 歴史は着実に前進し、後戻りは許されない。朝高、朝大卒業生の六割は、すでに祖先の眠る韓国を訪れている。総連にとって最後の牙城である民族学校はこのままだと自然淘汰していく以外に道はない、とアピール文は訴える。

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 「懇談会」が発足して以降、全国津々浦々から総連の民主化と民族学校の教育改革を要求する声が、日増しに活発化しているという。九七年に関西地区の商工人らがのろしをあげた「民主無窮花」発足は、日本の報道機関にも大きく取りあげられたことは記憶に新しい。四国、九州からも同調の声があがっている。

 「懇談会」の活動に対して、総連は有形、無形の圧力をかけ始めている。それにもかかわらず、「懇談会」は将来を担う在日同胞子弟の幸せと貴重な同胞の遺産、財産を守ろうと呼びかけている。「懇談会」の精力的な活動を注視したい。

 連絡先は、〒100―8693 東京中央郵便局私書箱1297、「在日朝鮮人子弟の民族教育を考える懇談会」へ。

(1998.8.26 民団新聞)



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