民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
オリニの未来見つめて
各地の保護者会・オリニ会<14>

福岡・多文化共生フォーラム


本名で通う子どもたちが民族舞踊で共生をアピール

人権と向き合い問題提起

 アジアの玄関口とも言える九州、福岡市。その地域で在日同胞と日本人が共に生きる社会を目指し、九五年に多文化共生フォーラム・福岡(崔正剛代表)は発足した。

 会員は現在百五十人くらいで、その八割を日本人教師が占めている。事務局を担う李妙子さん(41)らは、在日同胞の子どもたちが通名でしか生きられない状況を変え、本名を名のっていける環境づくりを目指して活動してきた。

 在日同胞の本名問題について考えもしなかった日本人に、人格の基本となる本名問題を理解させることにより子どもたちを取り巻く世界を変えていこうというものだ。そのためにはまず先生が変わる必要がある。

 「在日同胞のことを理解していなければ、差別事件が起きても先生はきちんと指導できない」と李さん。教師たちと始めた勉強会では、『北風と太陽』の話を引用しながら、「在日の子どもにだけ問題を突きつけると、その子はますます自分を隠すようになったり、逆に必要以上に『民族』を背負い込むようになる。まわりの子ども全体が理解できるようにしてあげなければ」と釘をさす。

 それは高校の途中から本名を名のったことで、口にしなかったキムチを無理して食べるようになったり、「韓国人だったら韓国語を話せ」と強要された自身の苦い経験がベースにあるからだ。

 観点は「共に生きる」ということ。民族差別だけをなくせと声高々に叫ぶのではなく、人権につながる問題に向き合う。男子中学生は一律坊主頭というのもおかしいと思うから問題提起する。PTAの書記を務めた時は、納得できないので元号から西暦に改めた。

 長男の小学校卒業時には、生年月日を戸籍通りの西暦記載で、と学校側に申し入れたのにもかかわらず、元号で書いてあったので抗議。謝罪文を出させ、子どもの友人らが見守る中で卒業式のやり直しをさせた。

 世界に通用する西暦と天皇制に起源を置く元号の意味の違いを子どもたちは知るようになった。「知ることが豊かさにつながるし、自分とは違う文化的背景を持つ存在によって、自分の国を客観的に見ることができる」。

 九七年七月、市内の各団体とともに開いた「人権教育のための国連の十年」を記念する人権教育シンポジウムでは、本名で通う在日三・四世の子どもたちがサムルノリなどの民族の音を披露し共生をアピールした。同年八月には会の設立以来、三年にわたって求めてきた教育指導指針が策定された。九州では初めてとなる福岡市教育委員会の「在日外国人の人権に関する学校教育指導指針」には、「基本的人権尊重の精神に徹し、人種・民族・国籍を理由とするあらゆる差別を解消」「多様な文化を尊重する『共生の心』を醸成」などが謳われている。

 李さんは学校、PTA、行政以外にも福岡市内の企業約百社の人事担当者相手に講演を行い、在日同胞が本名で就職できる環境づくりのために、人権意識の啓発にも努めている。当面の目標を福岡県教育委員会の指導指針策定に定め、現在交渉を続けているところだ。「共生フォーラム」への連絡は、092(932)8816へ。

(1998.8.26 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ