民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
北韓は武力挑発を即時止めよ



 先月三十一日、世界を震撼させた弾道ミサイル発射実験について、北韓当局は四日、これを人工衛星だと発表した。平和利用のための衛星だと唐突に強弁するのなら、二日付の「われわれの自主権に属する。日本が口出しする問題ではない」という見解は何だったのか。なぜもっと早くミサイルではなく、人工衛星だとアピールしなかったのか、まったく理解ができない。その衛星からは地球に向けて金父子の歌やスローガンが伝送されるという。

 ミサイルであれ、人工衛星であれ、事前通告なしの今回の発射は、とうてい正当化できるものではない。韓半島は言うに及ばず、北東アジアやひいては世界平和に対する重大な挑戦を仕掛けたのは、まぎれもない事実だからである。

 それでなくても北韓は、テロ国家という汚名を背負っている。これまでも口先では平和を唱え、影では武力挑発を性懲りもなく繰り返してきた。

 その手口からすると、世襲によって次期国家主席になることが確実視された金正日への忠誠の度合いを、まずは軍が祝賀花火をミサイルに代えてお手本を示したということだろう。

 また、ミサイルと核という軍事力を後ろ盾に当面の対話相手、米国から高官協議で有利な条件を引き出そうという魂胆があったという見方もできる。和解と交流協力を掲げた金大中大統領の「太陽政策」に冷水を浴びせることで、南北対話の主導権を引き寄せたいとの思惑もあっただろう。


軍事独裁国家を完成させた北韓

 北韓は五日の最高人民会議で憲法を「改正」し、金正日を国家元首と国防委員長に推戴した。これで軍人に依拠した軍事独裁国家の出来上がりである。

 北韓は核の脅威をちらつかせ、何をしでかすかわからない不気味な国という印象を世界に強く印象づけた。対抗手段としての日本をはじめとした周辺諸国の軍備強化は必至で、再び冷戦構造へと逆戻りさせる危険性を帯びている。 その代価は破綻寸前の北韓に負えないばかりか、在日同胞にとっても重くのしかかっている。

 日本政府は朝日国交正常化交渉の再開凍結や食糧援助の見合わせ策に続き、名古屋―平壌間の旅客・貨物チャーター便の運航不許可を決めた。さらに一部の議員からは在日朝鮮人の資産凍結や北韓への送金停止を求める強硬論まで飛び出したという。

 日本上空を超えた北韓のミサイル発射報道は、一般の国民にも強い衝撃を与えた。懸念されるのは北韓に対する嫌悪が、かつてのパチンコ疑惑に端を発した朝鮮学校生徒に対する暴行事件の再発へとエスカレートしないかという点である。激高した感情は朝鮮籍、韓国籍を識別しない。「チョーセン帰れ」の怒号は、在日同胞にも息苦しさを招く。


ミサイルは「在日」をも射程に

 北韓は在日同胞が日本で生活しているということを露にも考えていないことが、今回の暴挙で白日のものになった。隣国日本に向けた弾道ミサイルは、在日同胞の生命と戦後半世紀にわたって営々と築いてきた財産をも射程に入れたことと同じだ。

 われわれは強い憤りを持って北韓を糾弾する。われわれは北韓当局に核開発の中止と武力挑発の放棄を再度訴える。世界平和を踏みにじる愚を二度と繰り返してはならない。と同時に、沈黙したままの朝鮮総連に対して、同じく日本に住む同胞の立場から北韓の暴発を食い止めるよう要求する。

(1998.9.9 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ