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戦傷病者援護法の地位確認控訴審の敗訴

在日韓国人に適用の道を付言で求めたものの…



 戦傷病者戦没者遺族援護法の国籍・戸籍条項を理由に障害年金の請求を却下された在日韓国人戦傷元軍属らが、日本厚相を相手取り処分の取り消しを求めていた訴訟で、東京高裁は九月二十九日、原告側の訴えを棄却する判決を下した。ただし、付言では、援護法の国籍・戸籍条項を改廃して在日韓国人に同法適用の道を開くよう立法、行政上の特別措置を強い調子で求めている。

 判決文は主文と付言に分かれている。付言が原告側の主張をほぼ全面的に取り入れているのに対し、主文では焦点となっている韓日請求権協定の解釈には踏み込まず、歯切れの悪さが目立った。原告側訴訟代理人の金敬得弁護士は「ごまかしの判決。日本の裁判所の限界が出た」と、残念そうだった。

 原告の石成基さん(76)と故陳石一さんは第二次大戦中、旧日本軍の軍属として戦傷を負った。こうした戦傷病者に対し、日本政府は一九五二年のサンフランシスコ講和条約発効と同時に援護法を制定して傷害年金の支給を開始した。

 ただし、同法には「国籍条項」があり、付則でも「戸籍法の適用を受けない者については、当分の間、この法律を適用しない」と定めてある。

 原告らは韓日両国の外交交渉で解決されるものと考えた。しかし、期待は裏切られた。

 サンフランシスコ講和条約第四条は、日本から分離独立した地域の「住民」の財産、請求権の処理は韓国と日本との外交交渉で解決されるとしていた。従って、韓国の「住民」ではない在日韓国人の問題は韓日請求権協定の対象外とされた(同協定二条二項a)。韓国政府もこうした立ち場にたっている。

 一方、日本政府は「完全かつ最終的に解決された」としており、両国の見解に食い違いがみられる。

 はたして韓日請求権協定で解決したのか、解決していないのか。判決はそこまでは踏み込んではいない。ただ、サンフランシスコ講和条約四条(a)は「日本に居住する分離独立地域出身者(在日韓半島・台湾出身者ら)を殊更に除外したものとは考えられない」とし、原告らの請求権の処理も二国間の取り決めの主題とされたものとの判断を示しているだけだ。

 ただし、付言では、原告らが韓日両国のいずれからも放置されたまま、今日に至っても補償を受けられる見込みがたっていない現状に理解を示し、日本側に速やかに適切な対応をとるよう求めている。

 それだけに「ここまで書いて、なぜ主文で書けないのか」と判決後、東京の弁護士会館で報告に立った金敬得弁護士はがっかりした表情。

 一方、新見隆弁護士は、付言が「行政、政治を動かして解決していくための手がかりとなる」と積極的に受けとめている。原告弁護団はいちるの希望を託し、最高裁まで争うことにしている。

(1998.10.7 民団新聞)



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