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故郷への支援に恩返し

2度目の今年は45人が訪問



数十年ぶりに故郷の済州道を訪れた
ハラボジ、ハルモニたち

 済州道が昨年から道出身在日同胞一世のために実施している福祉事業の一つ「故郷訪問」が、日本全国から四十五人あまりのハラボジ、ハルモニたちが参加して、九月十四日から四泊五日間の日程で行われた。

 故郷訪問事業は、経済的な理由から故郷を訪問したくてもできない六十五歳以上の道出身を対象に、遺骨奉還事業、養老事業とともに在日同胞に対する「三大福祉事業」の一つとして昨年から実施している。

 禹瑾敏・道知事は歓迎晩餐会で「在日同胞の愛郷精神のおかげで、済州道が大きく発展し、今や名実ともに国際リゾート地として世界に知られている」と感謝の気持ちを表し、招かれたハラボジ、ハルモニ一人ひとりの手を熱く握った。

 一行は、今年完成した福祉老人ホーム「平和の家」を見学した。同ホームは四千坪の大地の上に地上三階、地下一階、個人部屋二十、夫婦部屋十五室が設けられ、帰郷を希望する六十五歳以上の道出身者なら誰でも無料で入居できる在日同胞専用の老人ホームとなっている。

 愛郷の墓地、納骨堂では、すでに第二次世界大戦時に、強制連行・徴用などで日本に渡って死亡した道出身の無縁仏が安葬され、関係者の説明に真剣に耳を傾けた。

 「長生きするとこんなにいいこともある」と嬉しそうに語る洪千ハルモニ(89)や「独り暮らしの私に故郷が恵みを与えてくれた」と語る韓花仙ハルモニ(85)。在日同胞の夫と死別後、十八年ぶりに仙台から参加した日本人の辻本さん(72)は「夫の親戚たちから暖かく出迎えられてとても嬉しかった。言葉が通じなくても熱い絆を感じた」と招いてくれた済州道に感謝しているとつぶやいた。

 中でも五十一年ぶりに祖国の地を踏んだ朝鮮籍の康圭天ハラボジ(66)は「五歳の時に済州道を離れ、初めて目にする祖国は感無量で言葉では表わせない」と心境を語った。

 康さんは、一時期組織にも加わっていたが今は組織を離れて生活している。国籍を韓国籍に変えようとした矢先に祖国訪問ができて国籍変更の決心がもっと強くなったという。

 済州道の故郷訪問事業は、毎年一回以上、定期事業として秋夕を前後して実施していく方針だという。

(1998.10.7 民団新聞)



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