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在日2世オモニが《憩いの家》自主運営

八尾市、文化住宅拠点に
孤独感いやす昼食サービス



各自が持参しての昼食づくりに笑みがこぼれる

 【大阪】在日同胞二世のオモニが中心となり八尾市内の在日同胞多住地、竹淵で、在日同胞お年寄りのための集いの家「八尾サンポラム(生きがい)」を自主運営している。行政の福祉サービスの存在さえ知らず、孤独感にさいなまされているお年寄りにまず民間レベルで手を差し伸べようと、文化住宅の一室を借りて八月に開設した。将来的には、行政サービスの実現と充実に結びつけていきたい考えだ。

 「八尾サンポラム」は日曜日を除く毎日、午前十時から午後三時まで同胞お年寄りのために開放されている。十人ほども入ればいっぱいになる部屋だ。にもかかわらず、毎日平均十三〜十五人が入れ代わり立ち代わり利用している。

 お年寄りたちは昼食代三百円と自宅でとれた新鮮な野菜などを持参。テレビを見て過ごしたりおしゃべりしたりと、時間のたつのもわすれてしばしを過ごす。昼食は専従スタッフの調理した韓国料理。わいわいがやがやとみんなで一緒にとる。栄養バランスもいいから、病院通いを続けていたハルモニまでが元気を取り戻したという。

 主なスタッフは三人。徐玉子さん(49)の統括のもとで崔廣美さん(48)が食材の仕入れを担当、献立と調理は劉水子さん(42)が仕切っている。このほか、洪啓子さん(49)と白契子さん(49)が補助員として加わり、交替でお年寄りの世話にあたっている。全員がボランテイアだ。

 世話にあたっては、「八尾サンポラム」が受け身で参加する場ではなく、生きがいを感じられる場にしていくことを心がけている。このため、最近になって、水曜日の夜に日本人教師のもとで識字教室を始めた。これは、在日同胞一世お年寄りの多くが、文字が読めないために日本社会の各種福祉サービス、給付金制度の実態を知らず、結果的に取り残されているからだ。

 これは劉さんの訴えを受けて、徐さんらが竹淵地区の在日同胞高齢者四十数名を対象に一昨年実施した実態把握で明らかになった。独居老人世帯・高齢者夫婦も予想外に多かった。生活の糧はというと、生活保護であり、或いは極めて少額の被用者年金と子どもたちからのわずかな仕送りなどだった。食事も不規則になりがち。外出といえば病院にいくときぐらいなものだった。

 徐さんらは、高齢者福祉サービスを知らない同胞お年寄りに福祉サービスの入り口に立ってもらいたいと昨年十二月から月一回、公民館を借りて昼食会を始めた。月一回でもサービスを心待ちしてくれるお年寄りの存在が、「八尾サンポラム」の開設につながった。

 開設から二カ月、在日二世オモニらの献身に少しずつだが支援の気運も出始めている。

 今後、家族の会や後援会など、「八尾サンポラム」の活動を継続していくための「支える組織」づくりが課題となっている。

(1998.10.7 民団新聞)



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