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社会民主党の田英夫参議院議員は東京都の選出で、金大中大統領とは親友というほど長いつきあいをしてきた。苦難の道を歩み続けた末の大統領就任を、一番喜んだ日本人の一人であることは、自他ともに認めるところだ。田議員は今回の大統領の訪日によって、地方参政権の法制化に大きなはずみをつけるとともに、社民党が国会での推進役になると約束した。
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≪今世紀中に法制化へ≫
■金大統領の訪日をどう迎えますか。
社民党は土井党首も金大統領とは古い友人で、党をあげて歓迎したいと思う。金大統領が考えておられるアジアの平和、中でも韓国の統一問題や日本との関係について充分承知し、理解している。その大統領の訪日の意義は大きい。
九月十九日に青瓦台で直接話をうかがう機会があった。大統領はアメリカをはじめ他の国を訪問しているが、どの国よりも今回の日本訪問を大事に考えていると述べられた。
この機会に日本が過った過去の植民地支配のことをきちんと清算して、新しい日韓関係を築いていきたい。二十一世紀が本当に友好的な日韓関係になるように重要なステップになる訪日だと思う。
■歴史認識などが共有できるでしょうか。
強制連行や従軍慰安婦の問題をはじめ、歴史認識の問題について、社民党ははっきり日本の誤りを認めて謝罪し、その上に立って真の友好を築くべきだと考えているが、残念ながら他の党には金大統領の考えをよく理解できない議員もいるように見受けられる。
大統領が国会で演説をされるこの機会に、日本の国民を代表する国会議員が全員大統領の考えを正しく理解できるようになってほしい。それが社民党の願いだ。
金大統領が強調していたのは、日本の植民地支配がイギリス、フランスや他の国の植民地支配と根本的に違うということだ。他の国の場合は経済搾取であったのに比べ、日本の場合は、それに加えて民族の大切な宝である名前を日本名に強制的に変える「創氏改名」や日本語の強制、さらに天皇崇拝、神社参拝などを強要した。民族の誇りや文化を傷つける文化侵略だと言われたが、まったくその通りだと言わざるをえない。
しかし、最近の若い人はそういう事実を教えられていないから、理解できないかもしれない。数年前、韓国の高校生が長野県の松代の元大本営を訪ねて、多くの同胞が犠牲になったという事実を知ったが、周辺の日本の高校生がそれを知らないということにショックを受けていた。
今後は教育の面でもきちんとしなければならない。日韓関係の理解のためにも、近代史から逆にさかのぼって教えていけばいいというのが私の意見だ。
■地方参政権についての基本的な考えは。
社民党は従来から在日の皆さんの地方参政権には賛成の立場で、積極的に推進すべきだと言ってきた。われわれは立法府にいるのだから、できれば今世紀中に実現するように、法律を新しく制定するようにしたい。
特に、なぜ七十万人近くの人が日本にいるかという在日の皆さんのルーツは、かつての強制連行とも無関係ではない。そういう根元を考えると、単に長期在住の外国人ということではすまない。他の外国人とはまったく違った次元で考えなくてはいけないし、日本で一緒に住み、仕事も生活もこの国にあるわけだから、参政権を持つことは当然のことだ。
■法制化でネックになっているのは何ですか。
率直に言って、根元には民族に対する差別意識がまだ残っているからだ。結婚問題や就職問題、進学の問題も含めて差別があり、その延長線上に参政権付与を反対する人がいる。
これまで外国人登録法の問題など、いろいろなネックを皆さんの努力もあって少しずつ乗り越えてきたが、一番最後の象徴的な問題が地方参政権の問題だろうと思う。社民党は国会の中で推進役になることを約束するとともに、金大統領の訪日で法制化に大きなはずみをつけたい。
地方参政権は二十一世紀の新しい日韓関係の地ならしになるテーマだ。日韓の共同文書に課題として盛られることを願う。
(1998.10.7 民団新聞)
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