民団新聞 MINDAN
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韓日新メディア拓くKNTV社長

- 武藤義典さん -




「躍進韓国」多くの人に
9月から在日ニュースも開始

 躍動感あふれる韓国の今の姿を日本の家庭に届けるテレビ―。それがリアルタイムのニュースや人気ドラマなどを放送しているKNTVだ。チャンネルはスカイパーフェクTVの331。今年の九月からは民団新聞の紙面を題材に、初めて日本で制作した番組「在日コリアンニュース」も放送している。韓日新時代のメディアをスタートさせた武藤義典社長(48)は、韓国の良さを多くの人に伝えたいと話す。

 早稲田大学を卒業後、大手新聞社の広告担当を経て、八三年にテレビに影響力のある広告会社へ移った。これが活字から映像へ仕事の中心が変わる契機になった。八七年にテレワーク(株)を設立し、NTTの民営化に伴う広告に携わった。

 その後、コンピュータグラフィックスを使った大型の映像広告を手がけ、渋谷のハチ公前をはじめ、首都圏十二カ所で展開していく。九四年からは新たに世界初のフルカラー大型映像デイスプレイによる広告を開始し、本格的に映像の世界に飛び込んだ。平行して、「デジタル多チャンネル化の構想の中で、テレビ業界の一翼を担いたい」との思いも芽生えてくる。

 大学時代に知り合った在日韓国人の家庭では、韓国語が日常生活の中に根付いていた。新聞は数日遅れの朝鮮日報を読み、酒は真露を飲んでいる。

 「韓国人は自分の言語、文化を大切にする。そういう人たちが日本に百万近くもいる」との印象を強くした。そこに焦点を当てれば、放送は成立するのではと、早速韓国に飛んだ。

 ところが、韓国の放送局、新聞、官庁の関係者は「そんな馬鹿なことができる訳ないだろう」と一笑に付した。日本の文化も韓国に入っていないし、韓国の放送が日本で受け入れられる訳がないという。まして法律上の問題もほのめかされた。

 武藤さんにしてみれば、それはあくまでも推測の「ダメだろう」であって、誰も調べたわけではない。本当に法律の壁があるのか。調べてみると法律上の問題は何もなく、あったのは「韓日間には溝がある。日本の放送文化は受け入れられないし、日本に放送を送るのも無理だ」という観念的なものだった。

 二年近く玄界灘を行き来しながら、日韓双方の関係者の理解を得るために奔走した。

 「人脈を活用すれば、もっとスムーズに進めることができたかもしれない」と誰も手をつけなかった仕事を軌道に乗せるまでの苦労を振り返る。


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 放送開始の三年前に在日韓国人の家庭百二十軒を対象に行った調査では、「新設の韓国の放送に何を期待するか」との質問に、圧倒的に「ニュース」という答えが返ってきた。「新聞は遅れる。NHKは放送時間が短すぎる」というのである。

 ニュースの手応えは読めたが、当初は「日本人は一人も見ないだろう。在日社会でも韓国語が伝承されている。だから日本語の字幕は必要ない」との思いもあった。フタを開けてみると日本人の関心の高さに驚く半面、在日の若い世代が韓国文化の継承に冷ややかなのが、心もとなく映った。今は日本語字幕を増やす必要を感じている。


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 加入世帯は現在一万を超え、一カ月に約八百世帯も増えている。在日が五割、韓国から来ている人が二割、三割が日本人と見ている。

 日本の大手新聞に出した広告には、千三百件もの問い合わせが殺到した。日本人の加入が目立つのは、韓国文化に触れる機会が増えているからだと分析、この傾向は続くと指摘する。

 「韓国文化の良さ、お人好しで熱情家の等身大の韓国人を、放送を通じて伝えたい」と願う。二十九日にはNHKのBS1の番組「ハローニッポン」でKNTVが紹介される。日本全国どこでも視聴ができるKNTVへの問い合わせは、03(3578)1060へ。

(1998.10.21 民団新聞)



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