民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
永住外国人の地方参政権
日本各界に聞く<9>

衆議院議員・白川勝彦さん(自民)



 自民党の白川勝彦衆議院議員といえば在日同胞にはなじみ深い名前だ。九五年十一月の自治大臣時代に、これまで「当然の法理」であるとして外国人の公務員への道を閉ざしてきた自治省の見解に対して、採用後の方針を明確にすれば自治体にまかせるべきであるとの談話を発表した。以後、相次いで各自治体が門戸を開放した。韓日関係に携わって約十五年になる。現在、党の団体総局長の要職をつとめる。


◆◇◆◇◆◇◆◇


≪立法化へ環境整備が必要≫
国民のコンセンサス得る努力を


■十月に金大中大統領が訪日し、二十一世紀に向けた未来志向の両国関係の構築を確認しましたが、今後韓日関係はどのように付きあえばよいでしょうか。

 日本と韓国、お互いに力みすぎているんじゃないかというのが率直な思い。あまり構えずに様々な問題を率直に議論できるようになった時に成熟した日韓関係になったといえると思う。

 日韓の交流というのは日本の歴史上でも一番長い関係を持つ。不幸な三十六年間が今も後を引いているが、一日も早くそれを乗り越えることが大事だろう。そういう意味では金大統領が、本来友好的であった長い歴史に戻ろうと訴えられたことを私どもも率直かつ謙虚に受け止めたい。多少耳障りなことでも両国や個人が率直に物が言えるようになった時、成熟した関係になることができる。


■「白川談話」以降、職員採用の国籍条項を撤廃する自治体が急増しています。今後どのように進んでいくんでしょうか。

 本来の任命権者はそれぞれの地方自治体だが、実際上は国が縛っていた。強制力があったわけではないが、自治省がこのような見解を出していたことは自治体にとって大きな制約になっていた。

 この問題について在日韓国人の方からの大きな要望としてあったことは知っているが、必ずしも直接関係ない。それよりも自治大臣就任時には「地方分権」というのが最大のテーマだった。地方分権を自治省の方向性として示そうとしていた流れの中で、自治省が一律に外国人の採用を縛るのは違うだろうという考えがあった。ですから、各自治体がどう考えるかは、自治体の責任において決めてもらいたいと申し上げた。


■自治省の「重石」をはずしたわけですが、その英断は大きかったと思いますが。

 党内でも異論があった。しかし、各自治体が運営について自ら決定していかなくてはならないわけで、法律上の禁止規定でもない形で地方自治体の判断を縛るのはおかしい。私が下した決断は間違っていないと思うし、その後元に戻そうという動きもない。地方自治体が判断する問題だということでこの件は落着したと思っている。


■地方自治の根本が地域住民の参画にあるのならば、地方参政権も同様ではないでしょうか。

 地方自治体からの決議が上がっており、また国会の中でも遠くないうちに正面から議論される状況になってきたのは感無量。

 この問題は法改正をしなくてはいけない問題で、現実に法律ができて投票権が行使できるようになるまではそうスムーズに行くのではなく、まだいくつか超えなくてはならないハードルがある気がする。その最大の問題は、日本国民が素直な気持ちで当然だと思うか、それとも思わないかというところがこの問題の帰趨を決める気がする。

 これまで参政権は日本国民の権利とされていた。それに対して在日韓国人や他の永住外国人から参政権の付与を訴えられてきた。それを当然だと思う人が大多数いるのかどうか。七割八割いる状況ではないような気がする。地方自治体の選挙といえども政治であって、政治には国籍が必要じゃないか、という人もいる。例えば、当然と思う人が過半数ぎりぎりいて参政権を与えた場合、このように考える人たちが何となく力で押し切られたという感情が残る。その場合、良好な関係で進んでいる在日韓国人と日本人との関係が実りあるものになっていくかどうかを見極めなければいけない問題。

 地方参政権を付与することに日本国民が素直に良いことだと受け止めてくれるのか、それとも腑に落ちないという人も結構いるんじゃないか。自民党系議員の中にはまだ国民的コンセンサスができていないんじゃないかと躊躇している人たちが相当いる。

 八合目までは来ていると思うが本当の意味で環境が整っているかというともう少し大事なところでみんなで努力していく必要がある。日本国民の大多数の人たちが、参政権をという世論になるために皆さんにももう少し汗を流してもらわなければいけないし、私たち自民党も一生懸命汗を流さなければいけない。

(1998.11.11 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ