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世界人権宣言50周年を迎えて



 十二月十日、世界人権宣言が公布されて五十周年を迎える。そして、その日までの一週間を人権週間と定めている。いうまでもなく、人権週間は人権に対する啓蒙を積極的に行うために設けられたものだ。

 専門家でないわれわれ在日同胞がこの人権週間を意識したのは、紛れもなく外国人登録法の指紋押なつ撤廃運動からだと言っても過言ではない。事実、指紋押なつ拒否運動の全盛期である八〇年代は、われわれの運動に触発されたのか、県や市などの地方自治体は挙って在日韓国・朝鮮人への民族差別をなくす啓蒙活動を人権週間を中心に展開した。

 だからこそ、われわれも人権に関心を持ち、在日同胞以外の様々な人権侵害に対して知るようにもなった。しかし、昨今のこの人権週間での啓蒙活動において自治体の積極性が感じられないのはなぜだろう。

 これは、われわれ当事者の問題なのか。あるいは、各自治体、なかんずく日本政府の姿勢の問題なのか。


日本を厳しく指摘した勧告

 きしくも今年は、国際人権規約締結国に五年ごとの人権状況の報告を義務づけている報告書を日本政府が提出し、これに対する国際人権委員会の最終見解が(十一月六日)採択された。この見解を見ると、前回の第三回報告書審議後に出された勧告がほとんど実施されていないと、日本政府の姿勢を厳しく指摘している。

 われわれ在日同胞関連では、定住外国人に対する外国人登録証の常時携帯義務の廃止、民族教育に関する差別への懸念、合法的永住者の居住国への帰国権利などが指摘されている。

 今回の報告書は日本政府が自信を持って提出したにも拘わらず、結果的にこの五年間、日本政府は何の改善努力をしていないと自ら実証をしてしまったのである。

 このような日本政府の姿勢は、今年に入ってからの外登法関連の動きに如実に現れている。

 一つは、指紋押なつ拒否訴訟に対する最高裁判決が相次いで出されたことだ。これは勧告後であれば、国際世論から批判をまともに受けることになることを避け、あえて勧告前に取り急ぎ駆け込んだ対応であったとしか言いようがない。

 一方、外国人登録法の改正作業は、前回の改正時に五年以内に見直すとの付帯決議によれば、昨年中に行われなければならないが、実際にはようやく法務省で改正作業に着手した状況にある。これは、勧告の推移を見守りたいからではないのか。

 このような観点から見れば、日本政府は常に、状況に応じた小手先だけの対応に終始し、人権に対する一貫した政策がないといわざるを得ない。


一人ひとりが人権意識を持とう

 本来、人権とは人間が人間らしく営んでいく上での必要最低限の権利のはずだ。この簡単な権利が保障されていない社会の責任はどこにあるのか。行政だけの責任なのか。やはりそれは社会を構成しているわれわれ一人ひとりが無関心であったことも問われよう。

 アジアは相対的に人権後進国である。これは、日本も韓国もしかりである。これらを踏まえれば、われわれ在日同胞は、日本や韓国の経済的側面ばかりでなく、その人権意識に対してももっと関心を持つべきであろう。

 あらゆる人間に対して人権が保障されることこそが、われわれが目指す共生社会の実現の条件であり、近道であろう。

(1998.12.09 民団新聞)



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