民団新聞 MINDAN
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韓国・日本大衆文化開放最前線

ルポライター・姜誠



理念なき受容は新たな摩擦へ
「相互理解」の本質確認を

 ソウル・乙支路のミョンボ映画館の前で、『家族シネマ』の映画評を読んでいた学生がこう言った。

 「日本映画に興味があります。とくに岩井俊二監督の『ラブレター』が好き。『家族シネマ』も監督は韓国人ですが、セリフがすべて日本語なので、どんな出来上がりになっているのか、とても楽しみです」

 ソウル市内では十二月五日公開の『HANA―BI』(北野武監督)のポスターも目についた。「日韓の文化交流は大歓迎です。そもそも交流しない文化はいずれ行き詰まる。日韓に新しい文化が生まれることを期待したいですね」と、『家族シネマ』に主演した作家の梁石日さんは語る。

 これらのコメントに代表されるように、日本の文化開放はおおむね好感を持って迎えられようとしている。

 だがこの数カ月、日本の文化開放の動きを取材して、いくつか気になる点がある。

 そのひとつは何のために文化交流を行うのか、韓日双方とも整理できていない点だ。文化交流は相互理解のためにある。その基本は互いが異質な存在だということにまず気づくことだ。それで初めて互いの立場を尊重し、コミュニケーションが可能となる。

 しかし、どうも聞こえてくるのはカネ儲けの話ばかりだ。ある調査によると、日本文化開放で韓国のエンターティメント市場の年間売上約七千億円のうち、その二〇%が日本産にとって代わられるという。

 今進んでいる韓日の文化交流は、この二〇%のシェアをめぐる攻防戦のように思えてならない。異質さを認め合う努力よりも、まずはカネ儲けというわけだ。

 もう一点は韓日双方とも、互いの文化をストレートに受容しすぎるという点だ。知人の韓国TV局プロデューサーによると、いまソウルでコギャル文化や援助交際、不倫が目立つという。これらは主に日本の雑誌やビデオによってもたらされたという。

 また、日本では最近、韓国の人気グループ『S・E・S』がデビューしたが、日本ファンの受けとめ方は国内アイドルと同列で、外人タレントという意識は薄かった。こういった現象は韓国人と日本人の顔立ちや骨格が似すぎているせいかもしれない。

 だが、これまでの韓日の不毛な対立は、互いが同質な存在だという過剰な思い入れが原因ではなかったのか?

 同質と思うからこそ相手に大きな期待を寄せ、それが裏切られた時の反発は大きい。ストレートすぎる文化受容は危うい。

 韓日の文化交流が本格化するのはこれからだ。だが、理念なき文化交流は新たな文化摩擦をもたらすだけの結果に終わりかねない。

(1998.12.09 民団新聞)



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