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朝鮮学校の偏向教育に父母が反発

卒業生らも「現実と乖離」と非難



■生徒数減少に朝鮮総連が危機感

 朝鮮学校の内部に異変が起きている。朝鮮総連に近い情報筋によると、学生数の激減に歯止めがかからない同校の現状を憂慮した卒業生らが、昨年十二月五日、民族教育フォーラム「民族教育の今日と明日」を開き、総連中央常任委員会あてに「民主主義民族教育事業の改善強化に対して」と題する要望書をまとめた。

 民族教育を在日同胞社会の維持、発展の根幹と位置づけた上で、これまでの北韓一辺倒の偏向教育から在日同胞の現状に見合ったものに改善するよう強く求めている。朝鮮学校の存在とそこで行われてきた「民族教育」は、総連にとって"錦の旗"だっただけに、金日成父子に対する評価が旧態依然という制約はあるとはいえ、教育内容の抜本的改革を迫る内部からの要求は、大いに注目に値する。


■父母ら、総聯中央に改善の要望書

 この要望書は(1)二十一世紀の新時代と民主主義民族教育の理念(2)課程案編成と教育内容及び水準上提起されるいくつかの問題(3)学生教養事業に対して(4)至急是正対策が必要ないくつかの問題(5)教育事業に対する民意反映の制度化と組織化―を柱に、B5サイズ全16ページにわたる。

 提出したのは、東京朝鮮中高級学校新校舎建設委員会と民族教育フォーラムの参加者一同。同委員会は老朽化した東京朝鮮中高校を新築するため、不況下にもかかわらず、三千五百人で約十三億円の総予算を捻出し、昨年十月に新校舎を竣工させた。

 ところが、募金の過程で同胞らから聞こえてくるのは、ハード面(施設)とソフト(教育内容)の乖離(かいり)から引き起こされる生徒数減少の現状だった。総連内部に詳しい同胞によると、東京管内では一年間で五十人程度が日本の学校に転出。この数字は毎年一学級ずつなくなっていることを示す。


■金日成父子の肖像画はずし訴え、登校拒否も

 また、金日成父子の肖像画をはずさなければ、子どもを学校に送らないという父母の反発が、同胞の最大居住地域の大阪をはじめ全国に広がっており、実際に教室から肖像画が消えたの情報もある。

 これらの状況に危機意識を抱いた同委員会では、卒業生や父母ら、同胞の意見を収れんする場として、昨年四月と十二月に民族教育フォーラムを開催した。そこで出された内容を総連中央に提出することを決めていた。「金も出すが、口も出す」を地でいくものだ。

 要望内容は在日同胞の民族教育を再建するために、同胞の要求に見合う教育内容の改善に尽きる。例えば、北韓との関係では、「現代朝鮮革命史」が、ここ一、二年で「金正日同志革命歴史」と変わり、関連他教科と合わせると二重、三重にも金正日に偏重している。

 実効的推進に問題があるとした上で、日本の環境に合わない「革命」の文言をはずし、解放前の海外・国内の独立運動などを取り扱うように意見を述べている。


■韓国に対する正しい記述の要請も

 韓国との関連では、初級から高級学校まで「社会」の教科書では韓国の記述が、一言半句もなく、民主化闘争ですら高級学校全体で一一%であると、その少なさを指摘。韓国に関する情報が溢れる現在、事実のままを知らせる必要を説き、自身の故郷であり祖国である韓国をもっと理解し、愛する内容に改善するよう求めている。

 その他、国際問題や人権問題などを取り入れ、非総連系同胞にも門戸を開くことをはじめ、同胞の民意が反映されるよう、「教育審議委員会」の制度化と同胞からの意見や質問を受ける窓口の設置を提案した。

 十二月下旬に出されたこの要望に対して、総連中央は音無しの構えだが、総連の今後の動向を注視するとともに、在日同胞の学校を経済破綻した北韓に切り売りしている現状を鑑みる時、在日同胞の民族教育「百年の大計」について、民団としても共に議論する時期に来たと言えよう。

(1999.01.20 民団新聞)



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