立春も過ぎたというのにまだまだ厳しい寒さが続く。体が震えるような北風が吹く寒い夜には、やはり熱々のキムチ・チゲでも啜りながら体の芯を暖めたいところだ。
最近の居酒屋は気が利いている。というより時代の変化を感じる。「豚キムチ」だの「キムチナベ」などと、韓国風料理が店の人気メニューとなっている。
かつてキムチを手に入れようとするならば、焼肉店以外では、「韓国食品店街」と言われる"特殊地域"まで足を運ばなければならなかった。
最近ではスーパー、百貨店の食品売場はもちろん、コンビニでもコーナーの一角でしっかりと存在感を誇り、「キムチ鍋」などはテレビのトレンディ・ドラマにも登場するほどだ。
まして最近、キムチは「日本の食べ物」と勘違いしている日本の若者が多いというのも、皮肉な現象だ。
十年ほど前、韓国を訪れた際、友人と江南区の韓国食堂に入った。日本人観光客も多いその店では「ピビンバ」=「韓国式まぜご飯」、「カルビタン」=「牛肉スープ」、と言った具合に、ハングルの横に日本語の解説を加えたメニューを備えていた。
その中でもなるほど、と感心したのが牛の血を原料として料理した、「ヘジャンクッ」(ソンジクッ)というスープの翻訳だ。ズバリ「二日酔いのスープ」、と解説していたのが今でも思い出す。
その名の通り、深酒の後にこれを胃袋に詰め込めば、嘘のように二日酔いの地獄から抜け出せるから不思議だ。
さて、日本ではすっかり「市民権」を得た韓国料理だが、このウルトラスープがもし日本でも普及するとすれば、メニューはどういう品名を書くのだろうか。(J)
(1999.02.10 民団新聞)
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