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北韓は軍事路線棄て経済再建を



 香港の英字紙、サウスチャイナ・モーニングポストの四日付け報道によると、中国の警察当局が北韓からの飢餓難民流出に歯止めをかけるため、中朝国境付近の民家を一斉捜索して取り締まりを強化しているという。また、密入国者(難民)を助けた中国住民への罰金を昨年の五百元から十倍の五千元に引き上げたともいう。

 この報道について中国外務省関係者も四日の定例会見で、北韓からの要請を受けてのものか、中国内部事情によるのもかどうかは言及しなかったものの「適当な措置をとった」と認めた。


■憂慮される中国脱出者の行方

 北韓では、九五年頃から顕著になった食糧不足によって約三百万人が死亡したと伝えられる。中朝国境には、このような状況にあえぐ北韓から脱出した住民が十万人以上存在するといわれている。だが彼らは、北韓の飢餓によって食糧を調達できず、やむなく中国に避難せざるを得なかった住民たちだ。

 北韓が飢餓状況に陥って以降の報道によると、大人ばかりでなく、両親を亡くした子どもたちもが食糧を求めて国境を越えている。このような子どもたちを中国に住む朝鮮族住民が保護している状況も伝えられている。人道的側面から見て極めて人間的な配慮というより、人として当然の行いといえる。

 飢餓難民が摘発され、北韓に強制送還された場合、銃殺されるか投獄されて餓死することになるという。北韓住民たちは、北韓に残れば飢餓の苦しみにあえぎ、中国に逃れれば摘発の危険に身を置かざるを得なくなった。進むも地獄とどまるも地獄、という苦悩の選択に直面している。

 強制送還されれば、彼らの身にふりかかる措置がどのようなものかは火を見るより明らかだ。彼らを単に不法入国者ととらえずに、やむを得ず入国せざるを得なかった経済難民として処遇することが望まれる。


■袋小路に迷い込んだ北韓

 だが、根元的な問題は北韓にある。住民のサボタージュによって飢餓状況が生まれたわけではない。根幹的な農業政策をとらず、権力者にのみ盲従する体制が今日の状況を生み、その結果数百万人にのぼる餓死者を出した。のみならず、未だ軍事優先路線をたどり、住民の飢餓に予算を割こうとしていない。

 方やテポドンミサイルの開発に力を注ぎ、地下核施設建設に余念がない。米国務省関係者は、年内にテポドン2号の発射実験がある可能性を明らかにした。地下疑惑核施設についても米朝協議で、二回の査察を受け入れる見返りに食糧支援を要請した。このような、軍事力を交渉のカードに使い、様々な要求を突きつけていく手法は北韓の常套手段だ。これまでの多くの経緯を見ていくと、要求をエスカレートさせ、交渉を決裂させたのは北韓だった。

 すでに北韓の経済は破綻しており、自力更正は困難だという見方が大方である。現体制を維持するために軍事路線を拡大し続けていくならば、北韓は危うい存在となる。軍事路線を捨て、農業をはじめとした国家経済を建て直すことこそが、袋小路に迷い込んだ現状から抜け出す唯一の道だ。その道を歩めば、韓国ばかりでなく米日をはじめとした先進諸国が積極的に支援の手を差しのべることは間違いない。経済発展に力を注ぐ中国にしても同様であろう。

 住民を飢餓に追い込む体制では世界の共感を得られない。存亡の事態に直面しつつある北韓の動きを憂慮せざるを得ない。

(1999.02.10 民団新聞)



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