民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
3・1節80周年

運動の今日的意義を語る
姜在彦・花園大教授



姜在彦・花園大教授

■民族的生き方鮮明に

◆全民族的な独立運動

 「三・一独立運動」の原点は、日本に留学してきた学生たちの「二・八独立宣言」にある。先駆的な役割を果たした学生たちの決起は、在日同胞の誇りだ。当時、武断政治が行われていた情報閉鎖の中で、在日の彼らは世界の情報に接することができたし、その行動は日本だけで終わることなく、本国や上海の独立運動へと拡大していった。

 本国に派遣された留学生は、「独立宣言文」の起草者たちとも接触し、世界に向けて独立を発信した。「三・一運動」は社会主義、民族主義という思想的立場の前に、まずは「民族ありき」の和合精神で、全民族的な独立運動に盛りあげた。

 民族の解放というのは、血みどろの闘いの結果としてもたらされたという意識が、今の若い人には薄くなっている。だから、血を流して勝ち取ったものを守るという気概に欠ける。そういう意識を改革する必要がある。それが組織の仕事だ。具体的には、講演会の開催や民族大学の開講など、いろいろな形を通じて日常的に大衆的な啓発運動を行わなければならない。


■国籍保持は最後の拠り所

◆国籍保持と地方参政権

 ボーダレス時代と言われ、「国籍=民族」が成り立たないという意見もあるが、現実は国籍を守ることが、民族の立場を保持することになる。言葉や習慣、顔立ちまでどんどん日本人化する中で、国籍は最後の民族的なアイデンティティの拠り所だ。もちろん差別の厳しい日本社会で、生活のために日本化した生き方を否定はしないが、在日同胞の中核にいる人たちは、公私ともに民族的立場を明確にして生きる必要がある。それが「三・一」の精神を今日に生かす生き方だと思う。

 地方参政権獲得運動は、在米、在中、旧ソ連など、他の在外同胞にはない「在日」独自の画期的かつ歴史的な実験である。在日同胞は世代が変わっても、日本の中の異民族として国籍を守ってきた。国籍を守りながら権利の面で日本人に近づいていく闘いだ。決して同化ではない。

 本国との関係では、在日同胞の主体性をどう堅持するかが大切で、民族的な立場に立って、南北韓に対して「是々非々」の立場を取ることが必要だ。本国の体制ベッタリはよくない。馬鹿にされるだけだ。在日同胞は実業界で成功した人も、学界で名をなした人も「自手成家」したことの誇りを自覚すべきだと思う。


◆総連内部の変化に対応

 朝鮮総連の教育現場に変化が起きている。学父母たちが教育内容の改善を要求したが、総連の教育は民族教育ではなく、金父子に対する個人崇拝、盲従主義でしかない。生徒数の減少に危機感を募らせる熱誠的なOBが、起ち上がったが、総連同胞も「在日」をよりよく生きるという同じ考えを持っている。

 しかし、反省よりも保身を考える総連幹部は、北韓の方針が変わらなければ、変わらない。北韓と在日同胞の狭間にある総連を変化させていくのは、大衆の力にかかっている。

 総連の学校は総連だけの財産ではない。在日同胞の民族共有財産の視点に立って民団も関心を持ち、思想信条を超えた愛族精神で総連の同胞大衆との関係改善を働きかけていくべきだと思う。

 民団も総連も生活者の立場、日常生活の中から交流を進めて同胞和合を進める。「二・八」の志士が情報を活用したように、北韓を訪れる総連同胞の存在によって、情報閉鎖の北韓に情報が入り、変化が起きればと願う(談)。

(1999.02.24 民団新聞)



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