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韓国の漢字併用拡大

在日と本国での反応



≪優れた漢字文化を見直そう≫

 金大中大統領が閣議で漢字復活を指示し、まず韓国政府の公文書と道路表示板などへの「漢字併用推進方針」に、学界と一般市民の間で賛否両論が激しく巻き起こっている。一方、在日同胞社会では現在でも漢字交じりの韓国語が日常的に使われており、大方が漢字復活を喜んでいる。漢字使用に対する本国と在日同胞の主張をまとめてみた。


■在日同胞・「復活に歓迎」

簡略字体使う必要も考慮を 〜 金東俊神田外語大学名誉教授(74)

 誤解されては困る文書や新しい概念を正確に記述しなければならない論説・論文などには最小限の漢字はあって良いと思う。漢字教育は学習者の負担が大きく、時間の浪費という説もあるが、漢字学習は国語を正しく理解し表現するだけでなく、造語力が身に付き、頭脳発達に影響するプラス面も大きい。また漢字教育をするのであれば字体を簡略化する必要もあるだろう。


子どもたちが一番の犠牲者 〜 姜在彦花園大学教授(73)

 歴史書を読んでいても、固有名詞や地名を日本語に置き換えるときに困る。同様の意味で韓国国内から原稿を依頼されてハングル表記するときも、正しく文意が伝わるのかどうか困惑してしまう。

 なによりも一番の犠牲者は、韓国国内の子どもたちや若い人たちですよ。これまでの政府の施策がふらついていたためにろくに漢字を読めず、日本に留学に来ても漢字のマスターに困っている。


漢字併用は時代の要請 〜 徐龍達桃山学院大学教授(67)

 世界的な国際化の流れを受け、古典や伝統文化を広く知らしめることは時代的な要請となっている。多様な文化が共生し発展しあっていく今の時代に、ハングルオンリーはややもすると狭い国粋主義の流れに陥りやすい。韓国固有の文化を発展させていくうえでも主体はハングルで当然だが、常用漢字の字数を制限したうえでの併用が望ましい。


漢字とハングル調和取れてこそ 〜 朴得鎮さん(自営業・52)

 視覚にも訴える漢字が適度に混用されれば、読解速度がアップする。個人的にも大いに歓迎したい。ロゴスの確実な表現・伝達・蓄積手段である文字は、文化そのものだ。そして文化は、国力そのものだと思う。文化的な受容力は大きいほどよく、発現力も豊富であって欲しい。漢字が育んだ文化遺産を血肉化し、次々に生まれる概念や文化を効率的に摂取して、韓国語と韓国人の感性をより豊かにするためにも、ユネスコが世界で最も優秀な発音文字として「世界記録遺産」に指定した科学的なハングルと、造語・縮約能力に優れ、文化的な含蓄の深い漢字の調和は不可欠。


漢字の優秀性見直す機会に 〜 張恒星さん(韓国語講師・43)

 今までハングルだけで通じてきており、実際問題として漢字使用はあまり意味をなさない。しかし、韓国は古来から漢字文化圏の中に位置し、漢字を使ってきた。世界的に見れば表意文字を使っている文化圏は少数だ。現実的に漢字は文字文化としてすごく優秀だ。このような漢字文化を無にするのはあまりにも惜しい。漢字を使用したほうがより便利である。漢字文化の良さを見直してほしい。



■本国居住の在日同胞

2世らの本国理解に役立つ 〜 ハイ徳恩さん(大韓航空勤務・41)

 日本で生まれ教育を受けた私にとっては大歓迎。ハングルといっても同音異義語が多くて最初は理解するのにだいぶ苦労した。漢字を取り入れることによって、一目でその意味が分かるようになるし、仕事もはかどる。これから本国を訪れる在日二・三世にとっても韓国を理解するのに大変役に立つと思う。



■日本留学の本国同胞

周辺国理解に漢字は必要 〜 林守沢さん(松下政経塾研究員・39)

 世界との壁がどんどんなくなる今日にハングルだけというのは自ら壁を作ることになる。二十一世紀に韓国が東北アジアをリードしていくには自ら殻を破って周辺国を理解しなければならない。



■本国では世論2分で激論も

 「伝統文化の理解」「漢字文化圏国家との交流」「観光増進」に応じるための文化観光部(申楽均長官)の九日発表に対し、ハングル学会と「韓国正しい言葉研究会」などは各地で反対集会を行うなど、漢字併用の反対に堅い姿勢を崩さない。インターネット上でもこれに対する論議が活発で「ハングル専用」対「漢字混用」論争が激しさを増している。

 韓国の各マスコミも、漢字の併用、混用問題は国の「語文政策」および教育に関連する重要事項であり、もっと慎重に判断すべきだったと関係部署の発表に冷たい視線を送っている。

 また、ハングル専用に偏って中国、日本などが含まれている東北アジア文化や経済圏から韓国を孤立させるのではないかという心配の声もあり、北米自由貿易地域地代(NAFTA)や今年から本格的に使用されるユーロを例にあげ、ハングル専用に疑問を投げかけるマスコミも出始めた。

 解放後、進行してきたハングル化と、急速に進行しているコンピューター化を考慮、漢字併用の問題をどのようにバランスを取るのかと政府を辛口で叩く論調がある一方、小中高校の漢字教育にあたっては常用漢字の再調整と道路表示板の漢字表示の必要性を指摘している。

 最近KBS教育放送が大人五百人を対象に「初等学校の漢字教育義務化」ついて行ったアンケート調査によると、賛成76%、反対24%。漢字使用の必要性についての質問には64%が「認識する」、23%が「認識しない」と答えたという。 一方、日常生活で漢字の必要性について三分の二以上が「必要ない」と答えた。回答の大半が「漢字は複雑で難しい」「ハングルだけでも日常の生活には不便を感じない」というもの。


■韓国の言語施策

▼1948年10月 ハングル専用に関する法律制定・公布。大韓民国公文書はハングルで書く、但し、必要がある場合は漢字を併用できる。

▼51年9月 常用漢字千字を制定・公布。

▼65年3月 国語教科書が漢字混用に。

▼68年10月 大統領ハングル専用を指示。教科書から漢字削除。小中高教科書ハングルだけに。

▼72年8月 中高校教育用の漢字千8百字(中学9百字、高校9百字)を制定、発表。

▼73年3月 中高校教科書漢字併用に。カッコ書きで漢字使用。

▼91年、大統領令で公文書はハングルで作成と決定。

(1999.02.24 民団新聞)



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