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3・1節80周年式典

金大中大統領の記念辞全文



■経済復興へ四大改革を

対北韓、「包容政策」で進展めざす

 敬愛なる七千万内外同胞の皆さん!

 本日、三・一運動八十周年を迎え、私たちの偉大な先達の誇り高き意義と輝かしい業績を讃えるために、この場に集まりました。

 三・一運動は言うまでもなく、民族独立を再び呼び覚ました独立運動でありました。

 中国の「五・四運動」とインドの「反英運動」にも影響をもたらした「三・一運動」は、非暴力平和運動であり、民衆が自発的に立ち上がったまさに民衆の運動でした。

 この場を借りて、私たちは先輩たちの偉大な愛国精神と民族のための犠牲精神に対し、ともに称賛と感謝を込めたいと思います。

 民族のプライドを万歳によって輝かせた「三・一運動」に前後し、わが民族は世界のどの民族とも比べることのできない、驚くべき愛国心によって独立闘争の歴史を作りました。

 一九〇五年、「乙巳保護条約」以降、シベリアと満州、中国大陸を駆けめぐった四十年間の武装闘争をはじめ、解放となったその日まで、二十六年間法統を守ってきた「大韓民国・臨時政府」の独立運動は、世界に、逼迫した民族の歴史に前例がないことでした。

 したがって、「三・一運動」は我が民族の自尊と不屈の意志を世界に見せた、誇り高い快挙であります。

 親愛なる国内外同胞の皆さん!

 このように、わが民族は国難に陥ったときこそ、より力強い愛国心を見せてきました。そして、その底力は今日にも発揮されているのです。

 外貨危機に陥ったときに、わが国民は一斉に立ち上がりました。二十億ドルを超す、途方もない金を集め、職場ごとに経済を救おうとの運動を力強く繰り広げました。

 そして、世界が賛嘆するような私たちの国民的底力によって一年で外貨危機から勝ち抜いたのです。

 これによって、IMFの借入金の内、既に四十八億ドルを返済し、さらに今年中には七十七億ドルを返済する予定です。このように返済したとしても、外貨危機当初、三十八億ドルに及ばなかった外貨保有高が、現在では五百二十億ドルを超し、史上最高額を記録しています。

 貿易収支でも八十七億ドルの赤字から、一年の間に三百九十九億ドルの黒字という驚くべき実績をあげ、為替レートと金利でも過去よりもはるかに安定を見せています。物価でも予想以上に安定を維持しており、今年には消費者物価が三%台まで下がることでしょう。

 外国人投資も昨年、八十九億ドルと大きく増加し、今年は百五十億ドルに達する見込みです。

 その結果、世界の三大評価機関は一斉に韓国の信用等級を投資適格に復活させました。

 これこそがまさに私たちの血の中で絶え間なく流れている「三・一救国精神」の偉大な具現ではないでしょうか?

 尊敬する国民の皆さん!

 今年は金融・企業・公共部門と労働部門など四大改革を必ず完遂させます。このことがまさに国を救う道なのです。

 改革がなされてこそ、世界市場で勝ち抜く競争力が芽生えるのです。競争力が生まれてこそ輸出も可能であり、輸出が順調になされれば外貨も獲得できるのです。そして外貨を獲得すれば、借金も返済し、万一の外貨不安も防ぐことができるのです。

 四大改革は私たちが避けては通れない死活問題であり、すべての国民が心をひとつにし、完成させていくべきことだと、私は皆さんに強く訴えたいのです。

 失業問題に対し、国民の皆さんがとても心配していることを重々理解しています。現在、政府はこの問題解決に全力を注いでおります。

 国民の皆さんが最小限、着て、食べて病気を治すこと、そして子どもたちを学校に通わせるという四つの問題はどのような場合でも政府が責任を持って保証します。

 職場を増やすために雇用能力が高い中小企業とベンチャー企業、そして情報産業、文化・観光産業の育成に力点を置いて支援していきます。

 そのような私たちの努力で、現在百八十万人の失業者を今年末までに百五十万人に減少させ、来年と再来年にはより安定させていきます。

 政府は中小企業と庶民のために確固とした信念を持って、このような政策を積極的に推進していきます。

 実際、大企業中心の銀行融資が、昨年第4四半期からは中小企業中心に転換しています。融資規模を比較してみると、昨年第4四半期に大企業への融資は六兆ウオンに減少した半面、中小企業への融資は五兆ウオンに増えています。

 合わせて私は、国民の皆さんに約束します。

 政府は全ての国民が苦痛を等しく分担するようにします。そして、国の経済が軌道に乗れば、労働者や農民、庶民、中産階級など、全ての国民がその成果を共に分かち合い、国家の恵沢を受けることのできる、そのような政策を展開していきます。

 過去と同じように財閥や特権層を中心に国政を運営したり、政経癒着、官治金融、不正腐敗を仕事として行うことをこの地から永遠に消してしまうことを、私は三・一の英霊の前に厳粛に宣言する次第です。

 七千万同胞の皆さん!

 国民の政府は対北政策の基本として三大原則を鮮明にしています。

 どんな場合でも北韓の武力挑発を絶対に許さない代わりに、私たちも北韓を害することはしません。南北が互いに和解、協力し、平和的に共存し、共栄していこうというのです。

 このように安保と和解、協力を平行する私たちの対北政策は、米国、日本、中国、ロシアなど、韓半島周辺の四大国をはじめ全世界が支持しています。

 今や私たちは米国、日本などと緊密に協議し、協力しながら世界で唯一残っている韓半島の冷戦を終息させなければなりません。

 すでに冷戦を引き起こした当事者の米・ソの二カ国は和解し、ソビエト連邦は解体しました。私たちだけが同族間の戦争をしただけでは足りず、冷戦を継続しているのです。

 もちろん私たちはどのような場合でも共産主義者の侵略や支配を許しません。また、南北韓七千万の自由な意思と民主的な手続きによって全てのことを決定しなければなりません。

 しかし、現段階においては、最小限戦争の危機から民族を保護しなければなりません。また、共に経済建設に邁進し、民族全体の生活を向上させ、特に飢餓にあえぐ北韓同胞の生活を改善するようにしなければなりません。

 さらに、韓半島分断に責任のある強大国が韓半島平和に積極協力しなければなりません。

 国民の政府が包容政策を推進した後、南北関係には否定的な面と肯定的な面の両方が表れています。

 否定的なものとしては、北韓のスパイ船の出没と金倉里の地下核施設問題、そして北韓のミサイル問題などです。

 しかし、肯定的な面もあります。四者会談再開と若干の進展を見せている米・北会議、七年ぶりに再開された高位軍事会談、そして何よりも金剛山観光ですでに三万人が北を訪問してきたという事実です。

 また、改正された北韓の憲法に市場経済の原理が一部導入されたという事実も注目に値することです。

 包容政策の効果に対して一部の疑心と憂慮する視点とあるでしょう。しかし、包容政策は私たちができる最善の政策です。戦争による莫大な犠牲をもたらさないようにするならば、戦争を防ぐために最善の努力を全て行わなければなりません。

 再度強調しますが、安保態勢を徹底強化し、万一戦争が起きた場合、私たちが北韓の侵略を巧みに撃破することのできる準備の上に、このような和解政策を推進しなければなりません。

 したがって、私たちは北韓の否定的な態度に対しては、警告と同時に断固とした姿勢を、肯定的な態度に対しては希望を与えるメッセージを送っているところです。

 最近、北韓は釈放された長期囚の送還を要求しています。私たちは人道的な次元でこの問題を考慮することができます。

 しかし、北韓にも家族の胸に帰ることを渇望する国軍捕虜や抑留された民間人が多いのです。

 したがって、この問題は人道的な次元から、互いに公正な立場で論議し、処理するよう望みます。合わせて七千万民族全ての痛みである離散家族が、一日も早く再会できるよう心から願わざるをえません。

 愛する同胞の皆さん!

 きょう私たちは三・一節を迎え、もう一度国の独立のために満州やシベリア、中国等の地で闘い、貴重な命を捧げた先達たちのことを考えます。

 三・一運動当時、燎原の火で胸を焦がした先達たちの愛国心を感謝と尊敬の心情でもう一度考えて見ます。私たちは先達たちの魂と行動を手本に、私たちの前に立ちはだかっている経済的国難を必ずや克服しなければなりません。

 何よりも私たちの社会を病ませる不条理、不正腐敗、地域主義、利己主義などを清算し、二十一世紀の世界化時代に参与することのできる韓国人として私たちが自ら進んで自身を発展させる第二の建国運動が力強く成し遂げられなければなりません。

 ひいては三・一精神を具現させた私たちの先祖の魂を固く守り、私たちの民族が世界の先進隊列に堂々と参与することができなければなりません。

 これこそが私たちが三・一節を迎え、心から先達の偉大な精神と業績に応える道になるのです。

 政府が先頭に立ち、このような救国の大きな道を力強く歩むことを約束し、国民の皆さんの参与を願わざるをえません。

 ありがとうございました。

 一九九九年三月一日

 大韓民国大統領 金大中

(1999.03.03 民団新聞)



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