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外登法・これでも「改正」?

不備だらけのまま国会上程へ



■永住権者をかやの外

 指紋制度の全廃を柱とした外国人登録法の一部を改訂する法律案が、来週から参議院で審議入りすることになった。今回の改訂案では、在日同胞社会から要望の出ていた外国人登録証の常時携帯、重罰規定の廃止には触れず、永住・定住者は蚊帳の外におかれた格好だ。

 改訂案は「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の一部改訂案と併せ、今国会で審議される。

 両改訂案が視野に置いたのは主に不法入国・残留者を減らすための対策。不法残留者は四、五年前の二十九万七千人をピークに、ここ三年は漸減傾向をたどってきたが、最近は船舶による密入国が増えており、その数二十七万人台となかなか減らないという。このため、入管法一部改訂案には「不法滞在罪(仮称)」を新設している。


■常時携帯・罰則規定残す

 現行入管法では、偽造パスポートなどによる不法入国の罰則は「三年以下の懲役・禁固または三十万円以下の罰金」となっているが、摘発を免れたまま日本国内の滞在が三年を超えると刑事訴訟法の時効が適用される。不法滞在罪ではこうしたケースにも罰則を適用できるようにした。

 また、退去強制手続きがとられても一年を過ぎれば日本に再入国できたのを、新しい法律では五年に延長した。

 一方、外国人登録法においても、外国人登録証の常時携帯制度が「合法的な滞在者かどうか即時に把握する必要がある」(日本法務省の話)ことから撤廃には至らなかった。かわりに、特別永住者・永住者に限っては切り替え期間を五年から七年に伸張し、登録事項(職業、勤務先)の一部削減を図った。

 しかし、九二年の外国人登録法改訂案の国会審議の際、衆・参両議院法務委員会が附帯決議で「外国人の人権を尊重し、外登法の目的を含めて見直す」ことを求めたことからすれば、不満の残る内容となった。 指紋制度は全廃されるが、永住者・特別永住者についてはすでに九三年一月をもって指紋を採取されていない。附帯決議の精神からすれば、外国人登録証の常時携帯制度や重罰規定の撤廃こそ見なおされるべきだった。

 これは市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の実施を監視する昨年十月の規約人権委員会でも問われたこと。日本政府が九七年六月に国連事務総長に提出した第四回報告書を審査した規約人権委員会は、「内外人の取り扱いに差異を設けたのは合理的差別」との主張に「『合理的差別』という概念はあいまいで客観的な基準がなく、規約二六条と合致せず、容認できない」と最終見解で明記している。


■附帯決議の精神どこに

 昨年十月の衆議院法務委員会で中村法相が指紋押捺制度全廃に言及して以来、外登法改正運動は「終わった」かのような印象を一部に与えている。日本法務省でも改訂案について「現段階では最善のもの」としているだけに、このままでは在日同胞の指紋拒否闘争以来四回にも及んだ外登法改正作業はこれが実質的に最後の機会となるかもしれない。

 改訂案は五日に閣議決定される見込だ。同胞市民団体では国会上程が予定されている九日、午後六時半から東京・千代田区の在日韓国YMCA会館で「外登法改訂案に異議あり」全国集会を開く。

 国会での論議にどう在日同胞の意見を反映していけるか否かが今後の外登法運動の行方を左右しそうだ。

(1999.03.03 民団新聞)



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