民団新聞 MINDAN
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笑えない話



 思わずにやりとさせられるパーティ・ジョークを一つ。

 航海中に国際会議を開催していた豪華客船が難破し、大洋に投げ出された救命ボート上が舞台である。だが定員を超過していたボートは、そのままでは沈没しかねない危機的状況にあった。

 そこで重量を軽くするべく、各国から犠牲者を公平に一人ずつ出そうとの決議がなされた。

 トップバッターの英国人が「女王陛下の為に!」と発して頭からダイブすると、次の仏国人が「自由と平等と博愛の為に!」と間髪入れずに続いた。三番目の米国人も「民主主義の為に!」と叫び、渦中に飲み込まれて行った。

 さて、四番手の日本人はいつまで経っても立ちすくんでいる。ところが、順番待ちしていたイタリア人が業を煮やして耳元で囁くと、それまでの躊躇(ちゅうちょ)がまるで嘘のようにして、瞬く間に海に突っ込んで行った。

 何と言ったのかと周囲が訊くと、イタリア人はウインクしジャンプしながら応えた。「皆、飛び込んでますよ。遅れないようにしないと…」

 この様に各国の国民性や民族性を表したジョークは、本などで時折、目にする機会がある。この話には残念ながら韓国人の出番はないけれど、一体どんな台詞になるかを想像してみるだけでも楽しい。

 わが同胞の場合は、あるいは代表権をめぐって激しい立会演説会でも始められるのかも知れない。だとしたら、誰もが自分で自分を笑える大人の話ととして済ませられるのだが、これが彼(か)の国の人々であれば果たしてどんな結果になるのだろうか。

 「偉大なる××様」と大見得を切り、何一つ疑うことを知らず海の藻屑と消えてしまうのだと想像したら、現実的過ぎて背筋が寒くなった。笑えない話、である。(S)

(1999.03.17 民団新聞)



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