民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
1999年度・民団の基調と方針(全文)



≪地方参政権、年内立法化めざす≫

■内外情勢と展望

 一九九九年は二十世紀の幕をしめくくるための年となります。韓半島だけでなく世界的にも変化と激動が予想されます。

 まず、韓半島では南北韓関係が北東アジアだけでなく世界的に注目されています。北韓は昨年九月、最高人民会議で金正日を国防委員長に推戴し、金正日・軍事独裁体制が確立されたと見られます。

 しかし破綻した経済と慢性的な食糧不足によって、年間、数十万人の餓死者が出ているほか、住民の荒廃した民心によって、金正日体制は下部から揺れはじめています。このような現状でも軍事力を増強し、核開発やミサイルという手段で緊張を高め、国際的援助を引こうという、二重の戦術を企んでいます。

 北韓は今年一月一日の共同演説で、「強盛大国」建設を前面に出して、体制維持に必死のあがきを見せています。

 当面の懸案として、「金倉里」など、核施設に対する査察問題がどう解決していくのかが大きく注目されます。

 韓国政府はこのような危機的状況にある、韓半島情勢を打開するため、さる一月四日に開催した国家安全保障会議で金大中大統領が提示した、(1)韓半島の平和と安定増進(2)南北間和解協力の持続的な推進(3)安保と対北政策に対する国際的支援強化―などに重点をおいて推進していくでしょう。この流れを通じて、世界冷戦の終焉から十年が過ぎた現在でも残る韓半島の冷戦構造が解体されるよう期待したいころです。

 IMF体制下の韓国は昨年、「国民の政府」のスローガンのもと、金大中大統領の指導力を中心に、全国民が一丸となったことによって、国家的な危機を克服できるようになりました。産業構造調整と金融改革案を成し遂げ、国際化と自由化をより一層推進していけば、今年後半期にはマイナス成長から約二%程度の成長率に転換するはずです。

 しかし今年の最大の課題は、IMF体制下における構造調整と緊縮財政政策で発生した大量失業者問題の解決と国民的団結をめざした政治安定です。

 在日同胞と関連した本国の動きとして、在外国民と外国籍韓国人のための、「在外同胞の出入国と法的地位に関する法律」が昨年十二月十七日、国務会議を経て、政府案が国会に上程されたことです。在外国民の立場で見た場合、若干の問題点はあるものの、基本的には民団がかねてから要望してきた内容が含まれており、法案の成立が注目されます。

 日本社会も今年、転換期を迎えることでしょう。日本の最大課題である不良債権の整理と金融改革が進んでいけば、不況から抜け出し景気回復の軌道に乗るだろうと予測されます。しかし、このような日本社会の変動による効果が直ちに同胞社会経済に反映されるとは言えず、相変らず不況の中で困難な状況に置かれています。

 さらに、私たちの信用組合をめぐる情勢は厳しさを増しています。二〇〇一年に預金者保護が途絶えるため、時間的に見ても、今年中にいかなる事があろうと、生き残りへの努力を通じた統廃合が要求されており、民団を中心にした全同胞的な信用組合への支援と育成が求められています。

 「地方参政権獲得運動」関連では、昨年十月と十二月に法案が国会に提出されており、今年四月の日本の統一地方選挙以後に本格的な論議の展開が予想されます。これに本団は能動的な対処を行わねばなりません。

 一方、昨年五月に十八全大会を開いた朝鮮総連は内外情勢の変動に対し、能動的な対処が出来ずにいるだけでなく、彼らの誤った北韓金正日体制への盲従方針と反在日同胞的方針によって、衰退一路の道を歩んでいます。

 彼らの組織基盤は民族学校と商工人組織、そして北送同胞家族らです。朝鮮学校は生徒数が激減し、学校維持すらも不可能な状況にに置かれています。この現状に対し、現職の教職員、学父母、そして生徒らが北に盲従した教育方針の改定と学校運営の民主化をめざした改革を訴えています。また、北送同胞家族は北送させられた同胞の生存と人権問題に対し、総連中央に抗議をしており、商工人や一線組織人も組織現況に対する嫌悪感を持ち、組織脱退が進んでいます。最近二〜三年間に朝鮮総連を脱退した同胞は年間五千人〜六千人にも達しています。このような状況は同胞社会の帰化傾向の加速化に合わせ、流動性を増しています。同胞社会の変化には本団が責任を持って対処しなければなりません。

以上のように本団をめぐる内外情勢は変化と激動が予想されるでしょう。情勢と環境の変化に対し、能動的に対処しながら本団は九九年度の運動方針と事業を次の通り策定し、これを積極的に推進していきます。


■地方参政権立法化推進

 本団は昨年度、十月と十二月、日本国会に「永住外国人に対する参政権付与に関する法律」が上程されたという事実と、金大中大統領の歴史的訪日で地方参政権問題の新たな局面が開かれたという成果を土台に、今年中に必ず立法化を実現しなければなりません。

 まず、さる三月四日、衆議院の「政治倫理公職選挙法改正特別委員会」で在日韓国人を中心とする永住外国人への地方自治体選挙権に対する審議・検討を始めることで与野党が合意しました。これによって今年五月ないし六月から本格化される日本国会での論議を契機に、今年中には法案が制度化するよう立法化推進に全力を尽くします。

 このため、民団中央と地方幹部が一体となって日本国会議員に対し、理解と協助を求める活動を積極的に展開していきます。

 二番目に、地方議会への要望書採択活動を継続推進し、全地方議会が私たちの要望書を採択するよう中央と地方がスクラムを組んで積極的に展開していきます。少なくとも全地方自治体の過半数を超す地方議会が採択すれば、国会での立法化に大きな力となるでしょう。

 三番目に、日本社会の世論を一層喚起させなければなりません。地方参政権は地域住民として共生・共栄していく権利であり、日本地域社会の日本人の理解と協助が不可欠です。このため、民団はもちろん、「指紋押なつ撤廃運動」時に底力を発揮した婦人会、青年会、商工会議所、学生会等が、日本社会の世論喚起へ率先してくれることを願ってやみません。

 以上のように地方参政権獲得運動は私たちが主導的に展開し、本国政府と本国国会議員等の協助と支援を得ながら、今年中には是非とも実現しなければならない最重点運動です。挙団的推進へ総力を結集しましょう。



≪生き残りへ韓信協信組を構造改革≫

■民族金融機関育成

 昨年度、七信用組合が事業譲渡または合併をせざるをえませんでした。二〇〇一年三月、いわゆる「ペイオフ」が始まるこの期間内に自体改革を成さねばなりません。

 短時間内に不良債権の縮小と自己資本充実化の努力をすると同時に、信用組合の統廃合等、構造改革の断行こそが民族金融機関の生き残る道です。

 各信用組合の理事長をはじめとする役員らは「民族金融機関」という特殊性と現実的な利害関係に執着せず、私たちの子々孫々に対する歴史的な責任感を持って骨を削る努力をしなければなりません。

 昨年、訪日した金大中大統領が、また、金鍾泌首相が韓日閣僚懇談会の席で日本政府に対し、私たちの在日韓国人信用組合に対する配慮を求めていいます。私たちの信用組合は私たち団員が主体となって作り育ててきました。

 今後も日本社会の相対的な差別が存在するかぎり、民族金融機関は絶対に必要なのです

 同胞経済活動の血脈とも言える在日韓国人信用組合の健全育成をめざし、本団はより積極的に対処していきます。



≪共生・共栄への権利獲得を≫

■民族教育と「10月マダン」強化

 同胞社会の世代交代の進展や日本社会の変動によって、時代に見合った民族教育の重要性は、より切実になっていくでしょう。

 国際化時代に適した民族教育、情報化時代に対応した民族教育が求められているだけでなく、日本社会の中で共生・共栄をめざすためにも、主体となりえる民族教育の発展が要求されています。

 このような意味から今年は、民族学校に対する支援を継続しながら、多様な民族的社会教育に力を注いでいきます。

 まず、講座制「民族大学」の質的な強化と量的な拡大に尽力します。昨年度、初の試みとして開設した「民族大学」の常設教室、「東京コリアン・アカデミー」を東京本部とタイアップし強化・発展させていきます。

 また、今年は大阪本部を中心に、「大阪コリアン・アカデミー」(仮称)の設立へ努力していきます。

 同時に、全国地方本部中、少なくとも十カ所以上で巡回「民族大学」を開講し、民族社会教育の拡大発展をめざしていきます。

 二番目に、子どもから青少年にわたるまで民族教育に力を注ぎます。「オリニ(子ども)土曜学校」の「全国化」に向け、地方本部と支部、学園等のスペースを活用し、本国から派遣された教育院の協力のもと、積極的に推進していきます。合わせて子どもの「臨海・林間学校」の強化と中・高校生の「母国夏季学校」と大学生の「母国春季学校」も強化していきます。

 また「成人式」を活性化させ、民族的なプライドや同胞社会の構成員としての自負心を持つ場にしていきます。

 三番目に、同胞のまつりとして、すっかり定着した「十月のマダン(広場)」を一層強化していきます。

 同胞の遊びふれあいの場としてだけでなく、日本の中の在日韓国人として、日本の地域祭りと連携させ、共生・共栄の文化的表現の場として一層、開放的に発展させていきます。


■組織強化

 二十一世紀を目前に、三・四世たちの基盤発展のためにも在日同胞社会の指導母体である民団組織の強化が必要なのです。昨年度実施した組織研修は、組織活性化の基本です。研修なくして組織的な意思統一、行動統一を成し遂げることはできません。

 今年は「二十一世紀に備える民団」として、支部活動を強化していきます。そのため、研修と調査、そして支部強化に重点をおきます。

 まず、昨年度の組織研修の成果を土台に、今年も全地方本部が年二回以上、幹部研修会を実施します。各地方本部はこれを通しで、本団の全般的な運動と地域の特殊課題を理解し、実践への活力にします。研修は持続性が必要なのです。

 二番目に、組織の実態調査を約二年計画で推進します。まず、団員の実態を把握してこそ、団員の要求を正しく知ることができ、調査事業を通じて、組織基盤を確固にすることができます。

 今年からスタートし、二〇〇一年には新たな民団の方向を策定する基礎作業として調査事業を全力展開します。

 三番目に、支部活動の強化へ、支部単位の研修と全国単位の支部幹部研修会を組織していきます。それだけでなく、地方本部幹部と共に中央幹部も、組織の最も重要で基礎である支部活動の力となるように努力していきます。

 このような組織強化活動を通じて、当面の「地方参政権運動」に能動的に対処し、「二十一世紀に備えた基盤整備」に力を注いでいきます。


■宣伝広報活動強化

 機関紙「民団新聞」が全世帯直送体制の確立、紙面の拡充によって、名実ともに在日同胞社会のメジャー媒体となり、本団の運動推進へ先導的機能を発揮する機関紙として定着しつつあります。

 今年は「民団新聞」をより一層発展させ、電波や通信メディアの活用を拡大し、宣伝弘報活動を一層強化していきます。

 まず、今年こそ十万部読者態勢を確立します。機関紙の影響力とは、言うまでもなく読者数にかかっています。同胞社会最大部数ということだけでなく、圧倒的な威力を発揮できる新聞として発展させていきます。特に、編集内容面では当面の運動推進を柱に、同胞社会の現実的問題に対する論説や解説を強化し、団員の自発的な活動と意見を反映していく活気に満ちた紙面作りをしていきます。

 二番目に、昨年から試みた、「KNTV」の「在日コリアン・ニュース」とインターネット・ホームページを一段と充実させていきます。「KNTV」と連携をとり、「在日コリアン・ニュース」の内容充実と視聴者拡大に力を注ぎ、ホームページもさらに豊富にし、国際的連携を考慮した拡充を試みていきます。

 三番目に、「民団新聞」の自主財政確立へ、一層広告収入の拡大に努力していきます。機関紙「民団新聞」の拡充は財政的な後押しなしには不可能なのです。さらに全世帯直送体制の維持には膨大な財政的負担が中央本部を圧迫しています。したがって、全団的な広告活動を通じ、財政確立に力を注いでいきます。

 宣伝弘報活動の強化が、当面する「地方参政権運動」の成功的推進への重要な契機になるということを肝に銘じ、「民団新聞」の拡充と財政自立に努力していきます。


■団員の生活向上と便宜提供

 在日同胞社会は経済生活だけでなく就職、老人問題、冠婚葬祭問題等、直接的で日常的な生活問題にも困難さを抱いています。

 まず、相対的にいまだに残る就職差別に加えて、日本の長期不況によって、若い同胞世代の就職難が深刻となっています。就業の機会を多く作り、彼らの苦痛を少しでも減らすことが民団の事業です。

 今年も昨年実施した「在日同胞企業就業説明会」を一層拡充していきます。商工会議所と青年会、学生会と共に全国大都市を中心に開催していきます。

 二番目に、結婚相談活動の拡充です。在日同胞の若い世代の同胞同士による結婚が全体のわずか一五%に過ぎないのです。彼らの大部分が同胞の若者と出会う機会と場が少ないためと見られます。

 したがって、過去四年間の経験を土台に、「ブライダル・パーティー」をさらに多様化させ、地方本部と婦人会、青年会と協力して推進していきます。さらに今年から中央本部では。「結婚情報誌」の発刊を試みます。これを活用し、結婚相談を活発に展開させていきます。

 三番目に、既存の民団保険事業を新たに発展させていきます。新しい保険商品の開発と保険活動の主体を確立していきます。

 四番目に、葬祭に関しての便宜を図っていきます。葬儀、埋葬地、墓地等を韓国式で行えるよう、研究、開発し、団員への便宜提供を多様化するよう試みていきます。



≪2002W杯・韓日の架け橋的役割へ≫

■本国経済支援継続と「第二の建国」運動参与

 一昨年、外貨危機で始まった本国の経済難局に対し、在日同胞が自発的な愛国心を発揮して、大きな成果を見せました。本国政府、そして国民たちも高く評価しています。現在は、本国が血の出るような努力によって外貨危機は克服し、IMF体制からの克服にむけた条件が整いつつあります。しかし、いまだに経済回復は完全とは言えず、経済成長面でも今現在、マイナス成長の状態です。

 したがって昨年の第四十九回中央委員会の決定の通り、韓国経済が完全に自立発展し、第二の跳躍がなされるまで、本団は本国経済支援活動を継続していきます。外貨送金、預金運動、本国への観光誘致活動、本国投資奨励、そして国産品愛用運動などは今年も継続推進していきます。

 現在、本国では、経済危機克服と新たな跳躍をめざし、先進国隊列に堂々と進んでいく、「第二の建国」運動が汎国民的に展開されています。本団を中心に、在日韓国人も、昨年の外貨危機で発揮した愛国心を土台に、「第二の建国運動」に本国国民と共同歩調をとって参与していきます。


■2002W杯後援体制確立

 ワールドカップ史上初の韓日共同開催が実現されます。昨年十月、金大中大統領の訪日で発表した、「韓日共同声明」の精神が具現される絶好の機会であり、韓日両国の架け橋的役割を担う在日韓国人として、韓日の親善関係が実質的に確立されるよう、天が与えた機会とふまえ、「二〇〇二年W杯」の成功へ全力を尽くします。

 特に本団では、在日韓国人が日本社会との共生・共栄を定着させる最大のチャンスととらえ、今年を「二〇〇二年W杯」の準備元年に設定し、本格的な後援体制を確立すべきだと見ています。

 このため、挙団的に「二〇〇二年W杯・在日韓国人後援会」を組織します。後援会では韓日両国間で開催される両国の試合の応援と選手に対する支援、また、日本の開催都市へのボランティア、そして韓日親善行事への参与と支援などを行っていきます。

 これらの事業を展開するために必要な財政、即ち、募金活動も合わせて展開していきます。

 二十一世紀の韓日関係の発展のために、また、在日同胞と日本人の真の共生・共栄の確立のために、本団は今年から全力を注いでいくのです。

 以上、九九年度は在日同胞社会に大きな転機をもたらす年となるでしょう。今年中に地方参政権の立法化を勝ち取り、二十一世紀に備えた課業の達成へ総力を結集しましょう。

(1999.03.17 民団新聞)



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