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日本政府が同胞戦傷軍属へ救済の道

野中・官房長官が衆院で答弁



■衆議院内閣委員会で質問に回答

 日本政府は、第二次大戦中に旧日本軍の軍属として負傷しながら韓日両国から補償されず放置されてきた在日韓国人に対する救済を検討することになった。野中広務官房長官が九日、衆議院内閣委員会での質問に答えた。

 質問には民主党の佐々木秀典議員と公明党・改革クラブの河合正智議員が立った。両氏は、国籍や戸籍要件のために在韓、在日の韓国人元軍人・軍属が恩給や戦傷病者戦没者遺族等援護法(援護法)に基づく障害年金を受給できないでいる問題について政府の考えをただした。これに対して野中官房長官は答弁とこの後の記者会見を通じ、「今世紀末に、どういう処置がお互いの気持ちをやわらげるのか、われわれの責任を果たせるか、検討していく」と述べた。

 なかでも在日韓国人の戦傷元軍属については、韓日請求権協定に対する解釈上の違いから韓日双方から補償を受けられないでいるだけに「韓国政府とも十分に話し合い、その理解の中で可能な限り解決に向け努力するのが内閣の責任」と強調した。具体的な解決方法としては、議院立法で台湾住民に特別弔慰金を支払った事例を挙げた。

 佐々木議員は十日、本紙の質問に「官房長官は国籍・戸籍条項を外すのは難しいので、これに代わるなんらかの方法といっている。まず(補償の)対象となる人が何人いるのか、調査させるのが第一」と述べた。


■「解決への糸口」と評価

民団中央本部が談話

 民団中央本部の辛容祥団長は十日、野中広務官房長官の発言を「膠着状態に陥っていた問題の解決への糸口となりうる」と高く評価する「談話」を発表した。

 民団は在日韓国人の戦後補償は「日韓請求権協定」から除外されているとの立場にたち、関連する訴訟に関心を示してきた。しかし、司法はこの問題に正面から踏み込まず、立法府に判断を委ねる傾向が続いていた。

 この間にも被害者の高齢化は進み、なによりもなんらかの早期解決方策が求められていた。それだけに、「二十世紀の問題は二十世紀に解決を」との官房長官の積極的な発言は、事態の打開に希望を抱かせるものといえそうだ。具体策については「今後の推移を注視する」とした。


■支援団体、「援護法に位置づけを」

 国籍・戸籍条項を盾に援護法から排除されてきた在日同胞戦傷元軍属の原告、及び支援団体は、既存の法体系にきちんと位置付けるよう主張してきた。

 野中官房長官は二百万円を支払った台湾人元軍属の例を引き合いに出したが、一時金方式だけでは被害者の無念の気持ちを晴らせまい。

 日本政府にいま求められているのは、これまで在日韓国人の被害者を排除してきた戸籍条項の撤廃だ。金銭的な補償をどうするかはその次の問題だろう。

(1999.03.17 民団新聞)



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