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地方参政権実現へ大きな一歩

「一歩突っ込んだ形で」と小渕首相



固い握手を交わす韓日両国首脳

■小渕首相、金大統領に検討約束

 金大中大統領は二十日、韓国を公式訪問した小渕恵三日本国首相と青瓦台で首脳会談を行い、昨年秋に訪日した際にも日本側に強く求めていた定住韓国人への地方参政権運動付与問題について「韓国に定住する外国人に対して参政権を付与していくことを検討している」と述べ、日本側の前向きな対応を求めた。小渕首相も「自民党で検討しているが、一歩突っ込んだ形で真剣に検討したい」と実現に前向きの姿勢を示した。また、韓日投資協定締結など経済協力強化や両国の対話チャンネルの拡充などでも合意した。


■相互主義に対応
金大統領「在韓外国人に参政権付与も」

 地方参政権問題で金大統領はとくに、これまで日本の与党が主張してきた「相互主義」についても触れ、「韓国に住む定住外国人に対して参政権を付与することを検討している」と前置きし、在日韓国人の地方参政権付与問題に対する日本政府の対応をただした。

 小渕首相は「韓国の関心の大きさは十分に理解している。現在、自民党で検討しているが、一歩突っ込んだ形で真剣に検討したい」と前向きの姿勢を示した。 また小渕首相は、北韓への対応に関して、これまで「基本的には支持」と表現してきた「包容政策」について「支持する」と明確な姿勢を打ち出した。

 金大統領は「否定的問題と肯定的問題を整理して対応する必要がある」とし、ミサイル問題、地下核施設疑惑、拉致疑惑などの解決の上で、人道支援問題や韓半島エネルギー開発機構(KEDO)への支援、地下施設への立ち入り受け入れなどを米国にも積極的に協調を働きかける必要がある」と強調した。

 小渕首相は「北韓が建設的な対応を示せば、国交正常化を視野に入れた関係改善を図る用意がある」とし、「米国にも働きかけながら、独自に対応する努力も重要だ。韓日米で緊密な理解と連携の上に、行動する必要がある」と同調し、北韓に「和解と対話」を呼びかけることで一致した。

 また、米国のペリー北韓政策調整官(前国防長官)が対北韓政策見直しの中で打ち出している「包括的アプローチ」に支持を表明した。

 両国の対話チャンネルの拡充や両首脳の交流がより頻繁に行われるよう努めることでも合意。小渕首相がしかるべき時期に金鍾泌首相の訪日を招請するほか、第二回閣僚懇談会を秋に韓国で開催することで意見が一致した。

 経済協力関係では小渕首相が日本輸出入銀行を通じた十億ドルの支援を表明。韓日投資協定締結のための協議を加速化することで合意した。さらに小渕首相が「韓日経済アジェンダ21」を提案した。

 また、サッカーの二○○二年ワールドカップ(W杯)関係では「韓日文化交流会議」の設置に合意。W杯に向けた記念事業を進めることで一致した。

 韓国側から日本の大衆文化開放について第二段階の措置を発表する用意があると表明した。


■解説

 小渕恵三首相の訪韓は、二十一世紀に向かう未来志向の韓日両国と両国民にとって、また、韓日間の架け橋の役割を果たす在日同胞にとって非常に大きな意義があった。

 まず第一に、在日韓国人を含む永住外国人の地方参政権に大きな進展があったという点である。

 小渕首相は地方参政権を求める金大中大統領に対して、「一歩突っ込んで検討する。与党内で検討がなされるよう政府としても努力する」と語ったという。これまで与党の一部は、「相互主義」を持ち出し、地方参政権に消極的な姿勢を続けてきた。

 金大統領はこれに対して、韓国政府が「在韓永住外国人に対する参政権付与を検討している」と説明し、「相互主義」の観点による足踏み状態から大きく一歩を踏み出す成果をもたらした。両国首脳は昨年十月の金大統領訪日に続き、公式の場で地方参政権の推進を話し合ったことになる。この発言の重みを受け、日本の統一地方選挙後に実質論議が始まると見られる。

 また、これまで韓日両国間で懸案になっていた不幸な過去史について、首脳間も世論化の急先鋒を担ってきたマスコミもこれを言及せず、国民も追求の声を上げなかった。昨秋に両国首脳が「二十世紀に起こったことは、二十世紀中に清算を」と過去史を一段落させたことで、感情のしこりが氷解したと言える。韓日友好の新時代という国民的合意が成熟すれば、日本天皇の訪韓の地慣らしにもつながっていくのは必至だ。

 さらに、北韓への対応についても小渕首相は、韓国の「包容政策(太陽政策)」を支持し、「和解と交流」に転換するなど、両国の共同歩調を鮮明にするなど、両国の揺るぎないパートナーシップを再確認した。

(1999.03.31 民団新聞)



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