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「国際理解の教育推進を」

外国人都民会議・第1期報告で提言



青島都知事に報告書を提出する井上座長

■都側が取り組みを約束

 東京都知事の諮問機関として九七年十一月に発足した「外国人都民会議」が二十四日、都庁第一庁舎で青島幸男知事に第一期報告書を提出した。同会議の提言のうち、各種審議会の外国人委員拡充、国際理解教育の推進などは、都としても積極的に取り組む姿勢を明らかにしている。

 開かれた国際都市、共生社会の形成をめざして第一歩を踏み出した格好だ。

 外国人都民会議は十六カ国二十五人の委員で構成されている。九七年十一月から各五回の全体会議と部会を開き、生活者の目で国際都市としての東京を洗い直してきた。

 会議で取り上げてきた議題は、「意識づくり」(人権、国際理解教育、地方参政権)と「街づくり」(労働、住宅、環境など)、および、「情報」、「暮らし」の四項目。都は、それぞれの項目について出された各委員の意見、要望などのうち、実行可能なものについては新規課題として位置づけたり、或いは既存事業を拡充する形で政策に取り込んでいくとしている。

 たとえば、「外国人の意向や考えを都政に反映するために、各種審議会委員に外国籍住民を積極的に任命してほしい」との要望もそのひとつ。現在、都の審議委員は四千五百六十人。このうち、外国籍住民は「外国人都民会議」の構成員を含めても三十八人と全体の〇・八%にしか過ぎない(九八年四月現在)が、今後二%を目標に拡充していく。また、学校などで国際理解教育の積極推進を求める意見には、都で独自に「教育課程編成資料」を作成、区市町村に対する説明会を開催して実施を促していくとの方針を示した。

 いまのところ都内の公立小・中学校で国際理解教育推進校に指定されているのは七十五校にとどまっているが、今後は取り組み校が広がっていくものと期待される。

 一方、外国籍住民にとって身近で切実な問題ともいうべき住宅入居差別の解消に向けた取り組みとして、都は引き続き取引業者や家主に対する啓発に努めていくことを約束した。

 このほか、国との関係では、定住外国人に地方参政権を付与するため、関係法令の改正を求める要望書を提出したことも明らかにした。

 しかし、報告書には盛り込まれながら、実現の見通しがたっていない課題も多い。公務就任権問題もその一つ。一部の委員からは、管理職も含めて、外国人では差し障りがある職種とそうでないものを具体的に設定するための審議会設置を求める声が出たが、都は「現在、七十九職種中、約七割の五十六職種で国籍要件を撤廃している」と答えただけで、審議会設置に消極的な姿勢を崩していない。

 「外国人都民会議」は二十四日、最終報告書を取りまとめ、青島幸男知事に提出、第一期の全日程を終了した。

 第二期は会議は四月から再開される。


■地方参政権で意見の応酬も
 柳時悦委員に聞く

 「外国人都民会議」では地方参政権問題をめぐっても激しい応酬が交わされた。

 きっかけは柳時悦さんが「意識づくり」部会(九八年三月三十一日)に提出した「在日韓国・朝鮮人問題の理解のためのリポート」だった。同リポートは在日韓国人がどうして地方参政権を要求するに至ったのかを、公務就任権とからめ体系的に論じたもの。

 これに対して、総連側委員も文書で真っ向から反論に出た。五月の第三回全体会議の冒頭、「『定住外国人の地方参政権』に反対する私の主張」と題する文書を配布、論議すら反対との立場を鮮明にした。

 双方の言い分をめぐって座長を除く十六カ国二十四人の委員が一人ずつ持論を展開していった結果、総連側委員二人を除く発言者全員が地方参政権付与に賛成の側に立った。柳さんは「地方参政権がテーマに入り、自由な論議を交わせたこと。しかも、委員のほぼ全員が賛成だった」ことを何より成果点ととらえている。

 柳さんは公募ではなく、都の指名を受け「外国人都民会議」の委員に入った。この際、古い定住者の抱える問題の解決を図ろうそれこそが歴史的背景を抱えもって日本に定住するようになった自らの責務と肝に命じて会議に臨んだという。具体的には国籍要件のために都の管理職選考試験を受けられなかった鄭香均さんの公務就任権問題、地方参政権、無年金問題などを思い描いていた。

 ただし、発言にあたっては、「在日の特殊性」だけにこだわらず、新しい定住者にも共通する問題であることが各委員に伝わるよう心がけてきた。柳さんの言葉を借りるならば「外国人としての共生の論理」だ。

 これとは逆に総連側委員は、偏狭な民族主義を前面に押し出して地方参政権反対の論理を展開、結果的に各委員の反発を招く皮肉な結果となった。

 四月から始まる第二期期間中には鄭香均さんの管理職任用問題で最高裁の最終判断が示されるものとみられることから、柳さんは都の踏み込んだ対応を期待している。

(1999.03.31 民団新聞)



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