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晩学の春満開!同志社の同胞主婦

48歳で国文学博士に



邊恩田さん

■主婦業のかたわらコツコツ10年研究

 【大阪】在日同胞二世の邊恩田さん(48)=大阪府枚方市=が、韓中日三カ国の語り物を比較研究した論文で、このほど同志社大学から国(日本)文学では初の博士号を贈られた。

 邊さんは同論文で、日本の語り物「浄瑠璃物語」の忍び入りの場面趣向「四方障子の絵揃え」が、韓国のパンソリ作品『春香伝』の「四壁図辞説」と全く同じであることを明らかにし、その原拠が朝鮮時代十五世紀の文人・金時習の『金鰲新話』にあることを具体的に立証した。また、昔話の分野でも宇治拾遺物語に出てくる「腰折れ雀」が韓国の『興甫伝』(「フンブとノルブ」)からの影響を受けていることも発見した。


■同志社大初の学位取得

 論文審査にあたって主査をつとめた指導教授の向井芳樹さんは、「韓国、中国、日本の語り物の表現の特徴を実例にあたり、体系的に調べたのは今回が初めて」と高く評価している。さらに学内の文学研究者五十人余りによる全員投票を経て三月初旬、邊さんへの博士号授与が決定した。

 同大学国文学研究にドクターコースが設置されてから十三年、国文学で博士号を取得したのは邊さんが第一号となった。邊さんは天理大学朝鮮語学科を経て、韓国で国文学を本格的に勉強したいと梨花女子大学国文科二年に編入学した。さらに同大学院に進んだところで、父親が脳卒中で倒れたため学業中半にして帰日した。


■韓中日の語り物比較

 七六年に結婚、しばらくは生まれてきた三人の子どもの世話に追われた。末の子が四歳になり子育ても一段落したころ、一度はあきらめかけた研究への意欲が頭をもたげてきた。しかし、邊さんが大学院でもう一度学び直したいともらしたところ、周囲は反対こそしなかったものの戸惑いを隠さなかった。邊さんはそのときすでに三十八歳。

 しかし、夫(河東吉氏)の理解と子どもたちに支えられて八八年に同志社大学大学院の入学試験にパス、念願だった韓日古典文学の比較研究に打ち込むようになった。邊さんの研究は単なる比較に止まらず、韓国の古典文学が日本の古典文学のなかで形を変えてどう息づいているのかを厳密に検証したところに特色がある。

(1999.04.07 民団新聞)



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