民団新聞 MINDAN
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新たな決意で民族教育振興を



 二十世紀の終わりに近づく今年、韓国学校と韓国教育部の国際教育振興院でさわやかな笑顔につつまれた新入生を迎えた。

 同胞社会の少子化傾向と帰化者や日本国籍法による韓国国籍者の減少から、民族学校と母国修学希望者の減少傾向が指摘され、関係者の危機感をつのらせて来た。しかし、今年は若干異なるデータを示している。

 民族学校への入学生の微増と母国修学志願生の増加である。この傾向を学校関係者の努力の結果として受けとめ、評価し、歓迎したい。また、本団の各地方本部でも限られた人材と財源という困難さを抱えながら、講座制民族大学や土曜学校をはじめとする民族社会教育事業の振興の年とすべく意欲的に取り組んでおり、その成果に期待が寄せられる。


■韓国学校、振興院の内実化努力

 韓国学校四校は、近年、教師と理事会、そして保護者が、民族学校としての特色と学力向上にむけて努力を重ねて来た。建国高校の「そのままソウル」クラスの設置や金剛学園の中高一貫教育を活かし同族の絆を大切にし、民族的素養の向上を培うなど具体的に取り組んでいる。

 また、東京と京都韓国学校のように民族教育の専門教師というソフトと学校施設というハードを活かし、開かれた学校「土曜学校」を併設、日本学校に通う子弟に門戸を広げた。その結果、学校と教師に対する信頼を得るという成果を挙げている。

 また、保護者の願望である高学力に対しても、各校ともに受験校(高校)への進学と日本と韓国の大学進学率も向上している。このような結果が生徒数の微増をもたらしたと言えよう。

 一方、母国修学生を受け入れている国際教育振興院でも、昨年から修学生の立場に立ち「振興院の位相を高め、実力培養の年」とするスローガンをかかげ、教職員が一丸となって改革を進めている。特に院長の複数年在任をはじめ、奨学生選抜方法、時間外・夏休みを活用する補習、週当たり韓国語時間の増加、きめの細かな進路指導や教材の改訂などの改革を進めている。七〇年代初め、八〇年代後半に続いて、母国修学志願者の増加の契機となりそうだ。


■民族大学地方教室と土曜学校

 明るく豊かな同胞社会の構築は、韓民族の特性を自然な形で表現し、それを共有し、喜びをともにする民族教育の振興からはじまる。

 今年の本団の中心事業を、在日同胞社会の明日を共に考える、既成世代を対象にした講座制「民族大学地方教室」と日本学校に通うオリニを対象とする「土曜学校」の積極的な開設においている。そして可能であるなら土曜学校にオモニ教室などを連動させ、ウリマルや民俗文化など、韓民族の特性を母子で共有できればと願っている。

 来る二十一世紀は、世界の人々が、国、人種、民族という違いを文化として受けとめ、その違いを互いに尊重し合う「地球の時代」になると言われている。その一方で「人の時代」、「個性の時代」とも指摘されている。それは、グローバルな時代であればこそ、自分が「何者か」という問いかけ、すなわち民族的な自覚が求められているということである。民族的自覚を育む教育が今日ほど求められている時はないと言える。

 一九九九年の年度始めにあたって、在日同胞社会の次代の主人公たちを育成する民族教育の振興にむけて、全組織をあげ、決意あらたに取り組もう。

(1999.04.14 民団新聞)



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