民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
海割れのふるさとを再現

民俗色豊かに「珍島シナウィ」



■在日YMCA「スペースY」のこけら落とし

 在日韓国YMCA(東京都千代田区猿楽町)の多目的ホール、「スペースY」のこけら落としとして、韓国の「珍島シナウィ」が十、十一の両日、同ホールで公演された。二日間にわたり四回の公演を行ったが、三百六十席はもちろん、立ち見まで出るという人気ぶりを見せた。チャンゴやプ ク(太鼓)など伝統楽器を使った合奏曲だ。舞台では人間国宝二人を含む、珍島を代表する芸能の担い手、九人によって珍島の巫俗音楽の合奏や死者をおごそかに弔う儀式「シッキムクッ」などで、満員の観衆を魅了した。


珍島シナウィ

■生と死を土俗的に表現

 「シナウィ」は日本語で「調べ」の意味で、チャンゴやプ クなど伝統楽器を使った合奏曲だ。韓国の巫俗音楽と脈略をともにしながら発展した器楽合奏曲で、特に全羅道を中心に韓国南西部の巫俗儀礼で伴奏されている音楽だ。

 「韓国版モーゼの奇跡」と言われる海割れで有名な珍島は日本の歌謡曲でも歌われた。珍道では、今も健康や豊作を祈り、これら民俗芸能を楽しんでいる。


人間国宝・金大禮さんによる
「シッキンクッ」

■人間国宝2人も出演

 今回来日したのは「シッキムンクッ」の重要無形文化財(人間国宝)保有者の金大禮さん、「タシレギ」の人間国宝の金貴鳳氏をはじめ、「珍島プ クノリ」の全羅道無形文化財保有者の金吉宣氏や、「カンガンスウォルレ」の人間国宝候補者、朴鐘淑さんなど、珍島を代表する芸能の担い手ら九人。公演は第一部が祝い事を中心とした「生けるもののノリ(遊戯)」、第二部は葬式をテーマにした「死者のためのプリ(おはらい)」に分けて演奏された。

 第一部では、珍島の小正月や秋夕で村人が祝う民俗行事、シナウィの演奏をはじめ、サルプリ、パンソリの「南道唱」「南道雑歌」、プ クノリなど日常の生活に溶け込んでいる芸能を披露した。


韓国で唯一、両手に鉢を持つ
「珍島プクノリ」

■両手に鉢の「珍島プクノリ」

 特に観衆の注目を浴びたのが、珍島プクノリだ。韓国のプクは普通一本の鉢で叩く、片プクノリだが、珍島プクノリは両手に鉢を持って叩くという、珍島特有の演奏方法だ。

 全羅道の無形文化財に指定されている金吉宣氏が全身を絶え間なく動かしながら細かいリズムでプクの爽快な音色を披露した。

 第二部では、人間国宝の金大禮さんらによる死者の恨みを解く「コプリ」、霊魂を洗う「シッキム」、あの世に行く道を開く「キルタクム」など全羅道地方の葬式を再現した。

 フィナーレでは珍島アリランに続き、カンガンスウォルレが歌われたが、観衆も舞台に登り、出演者と手をつなぎ輪となった。

 「スペースY」では、今後も様々な催しが企画されている。

あの世に行く道を表現した「キルタクム」

(1999.04.14 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ