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荻原遼さんの北送事業著書が
大宅壮一・ノンフィクション賞に

「北朝鮮に消えた友と私の物語」



記念講演で帰国者家族との
連帯を訴える荻原さん

■「北送事業」再照明
 10万人の悲劇を訴える

 「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の共同代表の一人で、作家の萩原遼さんが十三日、『北朝鮮に消えた友と私の物語』で第三十回大宅壮一ノンフィクション賞に選ばれた。九四年にも『朝鮮戦争』で同賞の候補にあげられていたが、今回初の受賞。贈呈式は六月十六日の午後六時から帝国ホテルで開かれる。

 この作品は昨年十一月末に文藝春秋から出版されたもので、萩原さんは十七日、東京都内で開かれた「守る会」の第五回総会の席上で、関西地域の五十代の在日同胞から祝いの電話を受けたことを披露。「北に帰った兄弟のうちの一人はすでに亡くなった」と涙でとぎれる声に「この本を書いたことが報われた。個人の受賞ではなく、十万人の帰国者の悲劇がペンを握らせた」と語った。

 また、韓国の詩人、金芝河の言葉を引用し、「なぜ書くか」と問われれば、「書かずにいられないから書く。闇に閉ざされた真実を白日のもとに引き出すこと。それがジャーナリストの任務である」と述べ、集まった「守る会」の関係者らから喝采を浴びた。

 同著は「地上の楽園」との甘い言葉で在日同胞を欺き、北韓の生き地獄に追いやった「北送事業」や済州道の「四・三事件」にも踏み込んだもので、萩原さんにとって三十冊目の著作。

 「帰国事業とは何だったのか」と題した「守る会」の記念講演で、萩原さんは「帰国事業は、金日成と朝鮮総連中央議長の韓徳銖の陰謀」と断定した。その根拠として戦後初めて日本に送り込んだ北韓の女性工作員、南信子が韓徳銖に目をつけ、「祖国統一民主主義戦線」の中央委員に抱き込んだこと。次に、朝鮮戦争をしかけるため毛沢東詣でをした金日成が、日本共産党の配下にあった朝鮮人連盟のイニシアチブを韓徳銖を使って奪い返したこと。朝鮮総連の議長になった韓徳銖が、在日同胞の運動を祖国に直結させ、反対勢力を北に一掃したこと、などの理由をあげ、「帰国者は日本と朝鮮をつなぐ架け橋の存在。忘れず声をあげ、連帯しよう」と訴えた。

 「守る会」は同日、結成五周年のパーティを支援者らとともに開き、共同代表の小川晴久・東大教授らが、一日も早い解決のためにシンポジウム開催などの運動の継続を再確認した。

(1999.04.21 民団新聞)



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