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がんばれ!ハルモニ



■がんばれ!ハルモニ

 親の二のまいをしないで―。夜間中学に学ぶオモニたちが半紙に一生懸命書いた墨書に、ドキッとさせられた。

 何も知らずに見れば、ごく普通の文字にしか過ぎないだろうが、七十歳を過ぎた一世のハルモニの手によって書かれただけに、多分二世の多くはハルモニの気持ちを察するに違いない。十三歳の時から住み込みで働き、十八歳で結婚して渡日。がむしゃらに働いて、子どもには人並みの教育を受けさせてあげたい、と文集に綴る。

 「この年で筆もつなんてどきどきします」。戦争で家を失い、教育を受ける機会を失い、やっと夜間中学に入った喜びを書くオモニ。反対する主人と子どもを説得して学舎への道を切り開いたハルモニは「死んでもいいから学校の門くぐりたい」と書いた。

 京都の郁文中学二部学級と神戸の兵庫中学北分校には、勉学の機会に恵まれなかった多くの在日同胞のオモニたちが通う。その多くが第二次大戦や家庭の事情によって学校に通えず、戦争が終わっても子育てと生活に追われて願いが叶わなかった人たちだ。

 「どこにいっても自分の名前とところ(住所)が書けないのがいちばんつらかった」という。駅の名前が読めないから電車にもバスにも乗れない。もちろん一人では旅行もままならない。

 多くの一世ハルモニは同様の体験をしてきたのだろう。それが普通だと思っていたハルモニたちは息子にグチることもなく、一生懸命生きてきた。様々な体験を綴った文集を読んでいると、一世の母親が歩んできた道が痛いほど分かる。半面、学校に入れた喜びを綴った部分が、親不孝してきた息子にとって一縷の救いであった。

 がんばれハルモニ、のエールを送る。(L)

(1999.04.28 民団新聞)



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