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雨に負けぬ花



 日本の友人が桜を愛でる気持ちは、私にも分かる。春には北上する桜前線が気になるし、満開後の散り際のはかなさも肌で感じることができ、その思いに共感ができる。

 それは在日二世だからというよりは、日本人がどの花よりも桜に特別の思いを持ち、その下でなごやかに花見を楽しみ、酒を交わし、歌を口ずさむ姿を目の当たりにして来たからの様に思える。

 オランダ人が色鮮やかなチューリップで花壇を飾り、英国人が大切に薔薇を育て、子供の産まれた中国人が庭に桃の苗を植えるのを知れば、他者であっても彼らの大切なものを尊重し、理解しようと努めるのと同じことである。

 あるいはこれは、花だけに限らないのではないか。

 米映画「カサブランカ」は、仏領モロッコを舞台とした佳作だが、占領軍のドイツ兵が酒場で自国の歌を合唱して人

々を威圧するのに対抗して、ばらばらだった仏国人と米国人が肩を組み、ラ・マルセーユを歌い返して逆に圧倒してしまう場面がある。

 マイケル・カーチス監督は占領下という特殊な時代を舞台に、自由を踏みにじるものは許さないという信念を共有する者同士の連帯、それを表現したかったに違いない。

 どこの国歌であれ国花であれ、憲法や法律で制定していようがいまいが、国民であろうがなかろうが、映画の占領軍がした様に強制される筋合いはない。一方で大切にしたいという願いに価すれば、内外を問わず自然に敬愛されるものとなるはずだ。

 祖国には経済危機の時に先頭に立ったリーダー、苦痛を分担した国民、支援した海外同胞がいる。だから私は、雨に負けず咲き続ける無窮花が桜と同じ位に好きだし、愛国歌を歌い、敬意をもって太極旗を仰ぐのである。(S)

(1999.06.30 民団新聞)



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