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共生へのプレーボール



 夏の甲子園高校野球(全国高校野球選手権大会)をめざし、沖縄、北海道を皮切りに全国各地で地区予選がスタートした。この中で今年5月17日、日本高校野球連盟(牧野直隆会長)の定例審議委員会で「外国人学校野球部に関する特別措置」に基づき、正式加盟を承認された京都韓国学園の硬式野球部が外国人学校として史上初めて参加する。

 連盟が外国人学校に対する参加を認めたのは1991年。以来、軟式では朝鮮高校など過去七校の例があるが硬式では初めてで、7月15日に開幕する全国高校野球選手権京都大会が公式戦デビューだ。


■産まれたてのナイン

 6月26日に行われた府大会組み合わせ抽選会の結果、記念すべき公式デビューは昨年夏の府大会覇者で、全国大会準優勝の強豪、京都成章と対戦することになった。

 京都韓国学園の硬式野球部(金健博監督・23)は今年4月に結成されたばかりで、部員数もわずか12人。まさに産声をあげたばかりの野球部だ。

 金監督は「いまの実力では試合で何十点もの大差で負けるかもしれない。でも、挫折に負けないよう、在日としての生き方を野球から学んでほしい」と、同じ球児として大舞台に参加することの大切さを訴えている。

 今月19日に、金監督の母校でもある大商大堺と初の練習試合を行ったが、京都韓国学園は、33安打、18盗塁の猛攻を浴び、攻撃の方もノーヒット。3回を終わったところで0―58(コールドゲーム)で大敗した。

 しかしグラウンドには大勢の同胞がつめかけ、拍手や声援を送って選手たちを励ました。外野には大商大堺から「翔(はばた)け!京都韓国学園」との横断幕が張られ、同じ「高校球児」の仲間として受け入れられた。


■共に生きる地域住民として

 97年10月、大阪で開催された第52回国体(なみはや国体)の公式行事に史上初めて、在日韓国人が組織的に参加した。民団大阪府本部が「共に生きる地域住民として成功に積極参与したい」との協力申し入れに、大阪府側がこたえたものだ。

 国体のシンボルである炬火(きょか)リレーに府民とともに地元の在日韓国人が参加し、共生への灯火を運んだ。そして開会式の演技でも民族衣装による舞踊を披露しつめかけた6人観衆の喝采を浴びた。

 在日同胞は日本で生まれ育ち、地域社会の一員として貢献してきながらも、日本社会から「国籍」の壁によって様々な分野で排除されてきた。

 地方参政権をはじめ公務員の採用、入居差別など在日同胞に対する国籍の壁はまだまだ残されている。

 しかし、今回の京都韓学の参加が在日同胞と日本社会の共生づくりへの大きな一球となってほしい。その一球は一方通行ではなく、キャッチボールのように両者を結ぶ鍵になるはずだ。

 ようやく地域住民の一員として認められ、日本社会で叫ばれている「内なる国際化」の実現のためにも京都韓国学園の高野連加盟は大きな意義がある。

 日本の球児たちと共に「同じ仲間」として参加する権利を得た京都韓国学園。スポーツの世界で開かれた共生へのプレーボールを一つの契機に、在日同胞の総意であり、民団が全組織を挙げて運動展開している地域住民としての権利、「地方参政権」の1日も早い実現を願ってやまない。

(1999.06.30 民団新聞)



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