民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
共通テーマで共同授業

日韓合同授業研究会



東京で開かれた「第5回日韓合同授業研究会」

■アニメ「火垂の墓」で戦争の悲惨さ学ぶ

 韓日の教育現場にたずさわる教師らの実践交流を図ってきた市民グループ・日韓合同授業研究会が年に一度、双方の人士らの意見を発表し合う交流会が二十三日から二十六日まで東京で開催された。

 同交流会は今年で五回目。今回は日本側の教師はじめ韓日問題に興味を持つ人士ら百余人が、また韓国からも中・高校で教鞭をとる教師ら四十余人が駆けつけ、歴史や環境、いじめなどの分野でそれぞれの教育実践を報告した。

 特に五回の交流の中で醸成された同じテーマをもとに行われた共通授業が注目された。共同授業を実践したのは京畿道・京花女子情報産業高校の柳虎順教諭と長野県松本・蟻〓崎高校の西澤俊幸教諭。作家の野坂昭如氏の実体験に基づいて第二次大戦の日本を描いたアニメ映画「火垂(ほたる)の墓」を見て、戦争や市民の一般的な感情などを相互に意見を出し合い、両国の戦争理解などに踏み込んだ。


■深まる相互理解、信頼感醸成も

 親を失った幼い二人の兄弟がともに死んでいく場面に、両国の学生が戦争の悲惨さや兄弟の絆を思い、また戦争を引き起こした一部の指導者に対する怒りが生まれるなど、人間としての内面的な正義や怒りに共通の認識を持ったことが報告された。

 一方、伊藤博文・初代朝鮮総督や伊藤を暗殺した安重根義士など韓日間の歴史的人物に対する評価や認知度には明らかに差があり、歴史を相対的に見ることの重要性も悟った。特に韓国側からは日本の学生が何も知らないのは歴史教育のあり方に問題があるという意見も出されたという。

 しかし、認識に差はあるが、同じ人間としての感情などに差はなく、相互に信頼関係が生まれたのをはじめ両国市民全般に対する信頼感を形成するなど韓日の相互理解に一歩踏み込んだ授業となった。


■今後の韓日関係を模索

 これらの共同授業を通じて、今後の韓日関係改善のためには相互理解を深めながら信頼感をつくることが必要であり、学生だけでなく教師もともに学んでいく姿が報告された。

 歴史、環境、文化、出会い、教育の各分科会でも、両国教科書の比較分析を通した学習など韓日の相互理解に踏み込んだ教育実践が両国教師らから報告された。

 二十六日には靖国神社や二・八独立運動ゆかりの地である在日韓国YMCAなどを回り、歴史認識の実態を見て回るフィールドワークも行われた。

 今回韓国から参加したのは九四年に日韓合同事業研究会が発足し、活動を通じる中でカウンターパートナーとして結成された韓日合同教育研究会のメンバーら。

 日韓合同授業研究会は、資料だけの教育実践の交流ではなく、教育現場に立つ教師や児童・生徒との"顔が見える"交流を目指して活動してきた。四回の合同交流会を通じて韓日人士の交流も深まり、韓日の相互理解を求めて研究会に参加する人も増えている。

 代表の善元幸夫・荒川区立第四峡田小学校教諭は「個人と個人の顔が見える交流が根付いてきて、どんどん面白くなってきた。両国の子どもの未来を考える上でも、相互に意見を交換して信頼感ある日韓関係をつくっていきたい」と次回開催に意欲を燃やしている。

(1999.07.28 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ