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広島原爆・韓国人犠牲者慰霊碑

公園内で移設完工式



平和公園内に移設された韓国人慰霊碑

■「差別」から「平和」の象徴に

 【広島】広島市の平和記念公園(中区中島町)の対岸、本川橋西詰にあった韓国人原爆犠牲者慰霊碑が、建立以来30年ぶりに公園内に移設された。

 これまで公園の外にあることから「差別の象徴」との批判が絶えないできたが、公園内への移設が実現したことで「平和のシンボル」「共生の象徴」としてイメージチェンジが図られるものと期待されている。

 21日の移設完工式には韓国から金守漢韓日親善協会会長と文熹甲大邱広域市市長が出席、秋葉忠利広島市長、金容雨民団中央副団長、チョ圭泰駐広島総領事ら関係者とともに慰霊碑の除幕に加わった。


■8月5日に移設後初の慰霊祭

 広島で被爆死した韓半島出身者は2万人といわれている。慰霊碑は異国で非業の死をとげた犠牲者を慰霊しようと張泰煕元民団広島県本部団長ら有志が1970年に建立したもの。現在2527人の死没者名簿が収められている。

 韓国人原爆犠牲者慰霊碑が21日、装いも新たに広島市中区の平和記念公園内に移設完工した。碑を囲む基礎部分はこれまでの四角から円形状に変わり、碑の雄大さを際立たせている。移設費用は同移設委員会(権養伯委員長)が幅広く市民に呼びかけた結果、短期間のうちに目標の1500万円を大きく上回る2000万円が集まった。

 慰霊碑が移設されたのは、元安川をはさんで対岸に原爆ドームを望む平和記念公園の北端にある角地。付近には「平和の鐘」や「原爆の像」が見られる。


韓国の伝統的な告祀でお祓いを行った

■公園の北端にある角地に

 慰霊碑は、装いも新たに基礎部分には50〜60メートル四方の韓国産御影石が29個、低く飛び石状に直径五メートルの円を描くようにして配してある。このため、中央にそびえ立つ慰霊碑は、実際よりも雄大に目前に迫ってくるかのようだ。

 飛び石と慰霊碑の間に埋め込まれた小石には、表面に「平和」「戦争反対」などの文字が見える。これはこれまでの参拝客が折に触れて書き残してきたものだという。そのまま本川橋の西詰跡地から運び込んだ。

 移設費用は、被爆二世の権養伯氏を委員長とする韓国人原爆犠牲者慰霊碑移設委員会が担った。同委員会では国籍、民族を超えた幅広い人士に呼びかけ、5カ月という短期間で目標の1500万円を大きく上回る2000万円を集めた。募金に協力した人たちの名簿は慰霊碑に保存される。

 移設完工式に出席した秋葉忠利広島市長は「このたびの移設を契機に、日本人の心にいまなおセンむ誤った差別意識や偏見が1日も早く払しょくされるよう努力したい」と述べた。これに対してソウ圭泰駐広島総領事は「これまでは民族差別の象徴といわれ続けてきたが、公園内への移設が実現した今日からは、平和のシンボルとして、また日韓友好のあかしとして我々の心に刻まれることを願う」との金ソッキュ駐日大使のメッセージを代読した。

 この後、権養伯移設委員会委員長を初獻官に、張泰煕建立委員長を終獻官に迎えての厳粛な祭祀が、韓国固有の礼法に則って執り行われた。

 完工式後、移設委員会代表委員であり、民団広島県本部の朴義鍾団長は「一人でも生存者が健在のときにこうして公園内への移設が実現して大変うれしい」と率直に喜びを表していた。

 民団広島県本部は8月5日、第30回韓国人原爆犠牲者慰霊祭を行う。これは平和公園に移設して初めての記念すべき慰霊祭となる。


■75年から広島市に移設を要望

 韓国人原爆犠牲者慰霊碑は、「公園内に工作物を一切認めない」という広島市平和記念施設運営協議会の答申を尊重した広島市の方針に基づき、公園外の本川橋のたもとに建立された。

 しかし、その後の「ピカ資料研究所」の調査により不許可のはずの公園内に日本人の碑や像が7基も建立されていたことが分った。「広島市が堂々と答申を破っていたのである」(徐龍達桃山学院大学教授、「ハンチョソン統一碑への願い」から)。

 民団広島県本部は75年7月、あらためて慰霊碑の公園内移転を広島市に申し入れた。こうした要望活動は繰り返し行われてきた。

 1980年代初頭には、広島県朝鮮被爆者協議会(李実根委員長)でも広島市に朝鮮人被爆者追悼碑の建立を申し入れた。対応に困った市は、「碑の統一はできないだろうか」と逆提案。しかし、碑文をめぐっての民団側と総連側の調整がつかず、「統一碑」の話は暗礁に乗り上げた。

 しかし、平岡敬市長の代になってから事態が急進展した。平岡市長は慰霊碑が公園内から締め出しを受けているのは「差別」との認識を示し、昨年12月、建立委員会に対して公園内への移設を正式に認めた。

(1999.07.28 民団新聞)



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