民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー

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 文献によれば、野球の草創期はのどかな時代だったらしい。規則でもないのに遊撃以外の内野手が皆、各塁上に守備位置をとったのでヒットが簡単に生まれ、二塁に駆け込む走者が勢い余って「オーバーラン・アウト!」というケースが頻繁にあったと言うから容易に想像できる。

 その後、塁に束縛されずに状況に応じて守るポジショニング、走塁時のスライディング、併せてカーブに代表される変化球の開発が進みスピード化され、ほぼ現在の野球が形作られた。これらに背番号の発明を加えて、野球の四大革命と定義されている。

 背番号は、サッカーやバスケなどの他競技にも瞬く間に拡がり、ひいきの選手を遠くからでも識別できる、いわば目印の役目を果たして来た。

 幼い頃、銭湯の下駄箱で王の一番や長嶋の三番を奪い合った様に、背番号はスターの象徴であり、大選手のそれは永久欠番とされ記憶に残る。

 さて先頃、住民基本台帳法の改正案が衆院で可決されたが、国民総背番号制はプライバシーの侵害につながるとして、日本世論の中で強固な反対の声があがっている。

 全国民に十桁の番号を付けることは一面、行政サービスの徹底からは有効かも知れないが、多少不便な世の中であっても、人間はまず一個の人格を尊重されるべきだと考える人々とは、根本から相容れない制度なのだろう。

 一方で遥か以前から在日外国人に、登録番号が付けられているのを知る日本人は少ない。私たちはファンの声援がほしいわけではないし、先祖から伝わる姓と親が付けてくれた立派な名があるのだから、背番号が必要などとは決して思ってないのだが。

 野球と違って便宜もないので、機械の製造ナンバーの様に味気ない代物である。(S)

(1999.8.4 民団新聞)



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