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北韓はミサイル発射を中止せよ



 昨年八月三十一日に北韓が日本の上空を通過して発射した弾頭ミサイル・テポドン1号以来、北東アジアのみならず世界中が懸念と警告を表明する中、2号を再発射するかどうかに注目が集まっている。再発射すれば、すでに「世界の孤児」として認識されている北韓はますます窮地に追い込まれることになろう。一方、在日同胞としても、世界の理解を超える北韓の行為に糾弾の声をあげざるを得ないことは明らかだ。


■緊張高まる韓半島周辺

 すでに韓半島周辺には米国の弾道ミサイル警戒機、電子探査船、航空母艦などが派遣されつつあるという。

 再発射が現実味を帯びる中で、韓国を訪問している米国のコーエン国防長官は二十九日、金大中大統領はじめ金鍾泌国務総理など韓国首脳陣と会談し、北韓が準備しているとされる弾道ミサイル・テポドンの発射実験を阻止するために全力を挙げる方針を確認したという。韓米日の三カ国外相が二十七日にシンガポールで北韓への実験中止を求めたのをはじめ東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の議長声明でも再発射に警告を表明した。

 周辺諸国のみならず欧米など世界各国から警告が発せられているにもかかわらず、北韓は未だテポドンの再発射に関して態度を明らかにしていない。いうまでもなく、現在、ミサイルおよび核開発が北韓の外交的な最後の切り札であるからだ。食料や肥料ばかりか、すでに破綻している経済問題への支援を引き出すための小細工に過ぎない。また対内的には、金正日独裁体制を維持するためのものでしかない。

 テポドン再発射問題で懸念されるのは、韓国が北韓ミサイルの長射程化に対抗するために国産ミサイルの射程距離を延長すると同時に高性能空対地ミサイルの購入を米国側に申し入れたことだ。軍事的な抑止力だけを強化するだけでは、冷戦時代の米ソを代表するように軍事力だけが突出しかねず、ただでさえ軍事費に圧迫されている北韓経済はずたずたになってしまう。またやっとIMF体制から脱皮しつつある韓国経済も大きな負担を強いられよう。


■朝鮮総連系同胞も声あげよ

 そして在日同胞にとって最も懸念されるのは日本の対応と国民感情だ。日本は弾道ミサイルを迎撃する戦域ミサイル防衛(TMD)の日米共同研究を開始するなど軍事力の再配備につながる動きも出つつある。このほど防衛庁から出された九九年版防衛白書でも北韓の核・ミサイル開発に危機感を露わにした。

 テポドンが再発射された場合、北韓に対する日本の国民感情が相当悪化するのは免れない。それどころか、過去に起きたように一部の心ない人士による朝鮮総連系同胞への何らかのいやがらせが引き起こされるかも知れない。また一般日本市民の対朝感情と対韓感情が紙一重であることを考えれば、在日韓国人としても憂慮の声をあげざるを得ない。

 北韓は即座にテポドンの発射中止を表明すべきであろう。そして朝鮮総連系同胞も声をあげなければならない。

 金大統領は大統領就任以後、北韓の冒険主義を抑え、韓半島の緊張緩和を図るために「包容政策」を取り、北韓への援助を継続してきた。二十一日に青瓦台を訪問した全国の民団支部幹部に対しても、例えテポドンが再発射されてもねばり強く「包容政策」を続けていくと強い意志を示した。

 「包容政策」を受け入れ、韓半島の緊張緩和を図ることが焦眉の課題といえよう。

(1999.8.4 民団新聞)



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