民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
◆ 連 載 ◆

北韓の国家的犯罪を斬る(1)

日本人ら致[1]
実行犯から直接証言得る、日本のメディア



著書を手に北韓を告発する
石高健次・朝日放送報道プロデューサー

 今から四十年前の一九五九年十二月、朝鮮総連(総連)が提唱した帰還運動に乗せられ、在日同胞は希望に燃えて北韓に渡っていった。先行きの見えない日本での生活に見切りをつけ、「地上の楽園」を夢見た同胞は約十万人を数える。

 しかし、帰還者たちが北の地で見たものは、生活苦と自由のまったく奪われた金日成の独裁王朝だった。

 在日同胞を人質にしただけでは飽きたらない北韓は、世襲で権力を掌握した金正日が、今度は日本人を拉致して対南工作のスパイ活動に引きずり込んだ。

 また、故金日成の神格化のために巨費を投じて建造物造りに没頭し、ついには経済を破綻させた。そのあおりで生じた餓死者は、数百万人にも及ぶという。

 北韓が断行した国家的犯罪のうち、日本人拉致と在日同胞の「北送事業」、住民飢餓の実態を連載し、世論の力によって、人権を蹂躙する北韓の策動を一日も早く止めさせ、生き地獄から同胞らを救う一助としたい。


◇◆◇◆◇◆

 朝日放送東京支社の石高健次報道プロデューサー(48)は九一年暮れ、北韓の核開発疑惑を解明しようと、韓国に亡命した北韓の高官への単独インタビューを行った。その時にやはり亡命者の北送同胞、金秀幸氏から北送船が清津港に到着した直後の絶望的な状況を知らされた。それが「帰国者のその後」について取材を始めるきっかけとなった。

 行方不明になっている北送同胞の話や日本にいる家族に魔手を伸ばす北韓のスパイ活動を関係者に取材してまとめ、九五年に「闇の波涛から―北朝鮮発・対南工作―」というタイトルでテレビ放映した。

 さらに、九六年には『金正日の拉致指令』(朝日新聞社)、九七年には『これでもシラを切るのか北朝鮮』(光文社カッパブックス)を発刊し、北韓の蛮行を白日のもとにさらけ出している。

 中でも総連系の商工会の幹部が共犯で日本人拉致に関わった八〇年六月の原敕晁(はらただあき)さん拉致事件は、日本のメディアが唯一、拉致実行犯に直接犯行を認めさせたものだ。これは工作員、辛光洙が宮崎市の青島海岸から原さんを拉致し、原さんになりすますため日本に再びセン入、原さん名義のパスポートを取得して対南工作をしていた八五年四月、韓国に入国したところを逮捕された事件。

 辛とともに逮捕されたキム・Kは九五年二月、済州市内で石高さんの執拗な追及に対し、「気の毒なことをした」とうなだれた。

 また、七七年十一月、下校途中に行方不明となった新潟の女子中学生、横田めぐみさん(当時十三歳)の事件は、約二十年後の九七年二月に北韓による拉致事件だとして一気に世論化したが、これも石高さんの地道な取材がもたらしたものだ。

 日本人拉致は、日本政府が認定しているだけでも七件十人いる。「理不尽に拉致された人を片時も忘れず、無事に日本に帰国させるために声を上げ続けること。政府は断固とした姿勢で北朝鮮に迫るべきだ」と彼は闘志を燃やす。

(1999.8.4 民団新聞)



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