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介護保険のスタート前に

大阪市が同胞専用窓口設置へ



 【大阪】介護保険制度のスタートを前にして、大阪市は在日同胞の高齢者を対象に、専門の福祉相談窓口を9月1日から開設する。全国でもはじめてのケース。地域の高齢者福祉の谷間に置かれた在日同胞の声なき声を、行政施策に反映するきっかけにしてほしいと期待されている。

 介護保険制度の導入に当たって、サービスを提供する立場となる市町村は、地域の高齢者を対象に老人福祉計画を策定するのに必要なニーズ調査を行った。ただし、住民基本台帳を基礎資料としたため、必ずしも在日同胞の生活実態やニーズを反映したものとはいえなかった。それだけに、大阪市の「窓口」開設の意義は大きい。

 窓口が置かれるのは西区立売堀にある大阪市高齢者総合情報相談センター(地下鉄阿波座駅四番出口)。相談員は2人。このうちの1人、鄭貴美さん(42)=東大阪市在住=は民団大阪府本部の推薦を受け、来月1日から配属されることが決まった。毎週火曜日と木曜日、午後1時から4時まで高齢者福祉の相談に乗り、訪問相談にも応じる。

 「窓口」の開設は、民団大阪府本部が「総合的要望書」の1項に掲げ、5年ほど前から大阪市に働きかけてきたもの。市としても、10月1日には介護保険からサービスを受けることができるかを判定する「要介護認定」の申請を受け付けることから、被保険者たる在日同胞に合致したサービスの在り方を考える必要に迫られていた。

 大阪府の調査(1996年7月〜9月)によれば、府内に在住する六十五歳以上の在日同胞人は17,587人。高齢化率は10.6%と高い。健康状態を見ると、40.2%が「病気」にかかっており、「病気がち」答えたお年寄りも21.2%を占めている。

 保険福祉サービスについては、全体の約六割がホームヘルプサービスや訪問看護などの在宅サービスを望んでいるが、申し込み方法を知っていたのは2〜3%程度と極端に低かった。社会保障分野での国籍要件は順次撤廃されてきたが、戦後長らく制度の外に追いやられてきた歴史がここにも影を落としているかのようだ。

 民副団大阪府本部の鄭貴煥国際部長は「お年寄りも含めて在日コリアンは、これまで『見えない住民』として扱われてきた。窓口の開設をきっかけに、在日コリアンが『見える住民』として、その生活実態とニーズに見合ったサービスが受けられるようにしてほしい」と話しており、法律の隙間を埋める独自の対策を期待している。

(1999.08.25 民団新聞)



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