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四半世紀迎えたソウル地下鉄

その素顔を探る



一千万市民の足となっているソウル地下鉄

 韓国に地下鉄が走り初めて四半世紀が過ぎた。かつて、ソウル市民の足と言えばバスが主流だったが、今ではその主役はすっかり地下鉄に変わりつつある。ソウル市民や首都圏人口の増加にともない年々、拡張されてきたソウル地下鉄は現在、7号線まで増え、総距離は223・8キロにまで延びた。25年を経たソウル地下鉄の素顔を探った。


◆◇一日の利用客450万人◇◆

■1千万市民の足

韓国初の地下鉄は1974年8月15日に開通したソウル駅〜清涼里の7・8キロだ。現在、ソウル地下鉄の総距離は223・8キロ、7路線で、1日の利用客は450万人にまで膨れた。

 ソウルに続き、釜山、大邱にも地下鉄が開通し、近く、仁川、光州、大田などにも開通する。

 地下鉄は「早くて安くて便利な市民の足」としてバスに変わって愛されながら、市民生活のパターンを大きく変えていった。半面、慢性の赤字、ストライキ、事故、延発着などなど否定的な面もある。


■歌やドラマに

 開通から25年。ソウル地下鉄は1日450万人が利用する「庶民の足」となったが、地下鉄をテーマにした音楽、文学、美術が登場したほか、広告のテーマソングにもなった。

 人気歌謡グループの「動物園」は地下鉄の駅で会った過去の恋人を思う、切ない気持ちを表現した「市庁前地下鉄の駅で」の歌を大ヒットさせた。

 庶民らの哀歓を描いたミュージカル「地下鉄1号線」はロングラン公演の人気を呼んだ。

 西洋画家の李ジョンソプ氏は「地下鉄2号線」という、連作絵を発表した。


◆◇新語やドラマの定番にも◇◆

■広告の常連

 広告の世界でも地下鉄が多く登場している。

 あるスポーツ用品メーカーは地下鉄に乗り遅れた女性が地下鉄線路にあふれる波でウィンドサーフィンに乗って行く涼しい姿を広告に作った。

 携帯電話の広告では地下鉄の背景がおなじみとなり、電車の中で「ジャージャー麺」を注文する広告まで登場した。

 地下鉄公社によると一週間に2〜3件ほど、地下鉄を使った広告撮影をしたいとの問い合わせがあるという。テレビドラマや映画にも1〜2シーン程度は、必ず地下鉄が登場する。

 ソウル地下鉄の車内広告は東京の地下鉄や山手線などと同様だ。一車両当りに壁型、中吊り型など70枚以上のポスターでにぎわっている。

 総2,916輌に20万4,000余枚のポスターがかけられている。この年間広告収入は250億ウォンを超える。


■地下鉄新語

 地下鉄にちなんだ駄洒落の新語も数多く生まれた。

 まず、足場もない混雑を皮肉って「チファチョル(地下鉄)」を「チオクチョル(地獄鉄)」と呼ぶ悪名が生まれた。

 また、頻繁な事故や延着で「サゴチョル(事故鉄)」、「チガッチョル(遅刻鉄)」という汚名も現れ、ラッシュ時に乗客を車両に押し入れる鉄道員、「プッシュマン」も登場した。

 若年層では列車に飛び乗って、おもちゃの銃を鳴らしたり、スカートをまくり、ドアが閉まる直前におりる、「ランボーゲーム」、「マドンナゲーム」が流行することもあった。


■女性専用車も

 女性乗客への痴漢も社会問題化した。女性・老弱者専用車両ができたが、これもまもなくなくなり、車内放送で〓らな行為に対する警告が追加された。

 シルバーシートに座り、老人を見ぬふりのまま、居眠りをする若い大学生、携帯電話で大声で話すおばさん、椅子に横になっている中年男性などを怒鳴る「地下鉄礼節」広告まで登場した。


■不動産市場

 地下鉄は不動産市場にも影響を及ぼしている。

 アパート広告に「駅から○○分」という文句が必須となり、「駅中心圏アパート」の言葉も流行している。

 不動産情報誌、「不動産バンク」の編集長は、「最近、ソウルの人口が減少しているのは、ソウル郊外周辺まで伸びた地下鉄の影響が大きい」とし、「地下鉄は今後も不動産市場で最も重要なキーワードだ」と話している。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


各都市でも建設ラッシュ

■仁川地下鉄…南北結び10月開通

 93年に着工した仁川地下鉄1号線(桂陽区橘ヒョン洞〜延寿区東春洞)24・6キロが今年10月に開通する。

 仁川の南北を結ぶ地下鉄が開通すれば富平一帯と延寿区、南洞区など、仁川の南北方向の生活圏の変化に大きく寄与すると見られる。

 現在工程率は98・5%進んでおり、7月27日から、すでに試運転中を行っている。

 富平駅と仁川市庁駅など、主要駅周辺の発展が加速され交通難も大きく緩和される。

 しかし、当初2007年まで完工予定していた東西を結ぶ2号線と環状線の3号線工事が予算問題で無期限延期になり乗り換えの効果が大きく落ち込む。


■大田地下鉄…5路線を計画

 大田市の地下鉄建設計画は5路線で総距離102キロ。路線計画は1号線の板岩洞〜外三洞の22・6キロ。2号線(循環)はクァンジョ洞〜クァンジョ洞の30・5キロ。3号線はシンタンジン〜九到洞の23・9キロ。4号線は道龍洞〜安永洞9・7キロ、5号線は徳明明洞〜比来洞の15・6キロだ。

 1号線の第一段階区間(板岩洞〜政府大田庁舎)12・3キロは2004年開通目標で工事中だ。しかし、それ以外の路線は予算不足で完工がかなり延期されそうだ。

 1号線が開通されれば、板岩洞から外三洞までこれまでの80分から40分に短縮されるほか、見込まれる1日18万人の利用客にとっても市内交通が大幅に改善される。


■光州地下鉄…2002年開通

 96年8月に着工した光州地下鉄・1号線は2002年に部分開通する。区間は東区龍山洞から都心を経て、光山区玉洞までの20・1キロ。

 第一段階区間(東区龍山洞〜西区馬鞍洞)の11・96キロは、2002年に、第二段階区間(西区馬鞍洞〜光山区玉洞)の8・14キロは2004年にそれぞれ開通する予定だ。現在、四割ほど工事を終えている。

 工事費は総額、1兆5,886億ウオンだが、「莫大な工事費の割には単一路線では交通効果が少ない」との理由で、一時、市民団体と一部政治家が工事中断を要請し、論議を沸かせたこともあった。


■釜山地下鉄…アジア大会まで3号線完工

 85年7月に開通した釜山地下鉄は現在、金井区老鋪洞〜沙下区新平洞32・5キロの1号線全区間と、慶尚南道梁山市ホポ〜釜山鎭区西面22・4キロの2号線第一段階区間に地下鉄が通っている。

 1日の輸送客は1号線が55万8,000人、2号線第一段階が9万2,000人。全交通量の地下鉄輸送分担率は11・2%を超す。

 現在、2号線第二段階と3号線の江西区大渚〜蓮堤区ミナムロータリー〜海雲台区スヨン区間(18・3キロ)の工事が進行中だ。

 ミナムロータリー〜海雲台区盤松(11・2キロ)など、二路線で建設される3号線は地域交通難の解消と2002年W杯及び、同年秋の釜山アジア大会開催に備えたもので、早ければ2001年末に開通予定だ。


■大邱地下鉄…1日13万人240億赤字

 91年に着工した大邱地下鉄1号線(月背〜安心)は98年5月に全区間が開通した。工事費、1兆4,500億ウオンを投入し、総距離は27・6キロ。

 29キロ規模の2号線(多斯〜狐山)は97年1月に着工した。しかし、財源不足で完工が2002年から2005年に延びた。

 利用客は現在、1日平均13万5,000人で、当初の推定利用客22万余人を大幅に下回っている。地下鉄の使用率も七%台と、当初の目標12%を下回っている。このため、1号線は累積240億ウォン程度の赤字となり、大邱市の財政を悪化させている。

(1999.09.01 民団新聞)



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