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関東大震災と江戸博物館



 鳴り物入りで造られた江戸東京博物館。相撲の殿堂・国技館のあるJR両国駅から見た博物館は、周囲を圧倒する。

 中世の世界的な大都市、江戸の文化を伝えようと「重厚長大」の世相に建てられた博物館も、バブルの後遺症で東京都が財政赤字を抱える今となっては、立派な建造物も何やらもの悲しく感じられてしまう。入館料よりも維持経費の方が高く付くと、巷の攻撃もかまびすしい。

 内部はというと、実物大の日本橋、歌舞伎座があるかと思えば、ミニチュアの大名屋敷が展示されている。空間の贅沢な使い方に圧倒される。

 江戸から東京へ移り変わる世相の中で、2・26事件があり、第二次大戦がある。当時の生活を日用品などを通じて知らせている。それなりに見せてくれる。ゆっくり展示物を見ようとすれば、1日はゆうにかかりそうだ。

 順路の中で徐々に年代が進む。1900年代に入り、東京の大きな出来事として、当然関東大震災が展示企画として取り上げられている。展示物の説明は日本語と英語だ。関東大震災について日本語の表記は、震災ばかりでなく流言などによって多くの人が死亡した、というような文章が書かれてある。そこに韓国、朝鮮人の文字はない。

 一方、英語に疎いながらも英語表記を見ると、確かに「Korean」の単語が刻まれていた。

 関東大震災時に、根も葉もない流言・ひ語によって、6000人にものぼる朝鮮人が虐殺された事実は、日本社会の中においても、事実として認定されている。だが、英語表記には書かれていても日本語表記にはない。

 9月1日は関東大震災忌。防災の日はあっても、過去をくり返さぬと誓う日はないのだろうか。(L)

(1999.09.08 民団新聞)



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