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飢える北韓の極秘映像公開

脱北者が隠し撮りに成功



着の身着のまま闇市場を徘徊する北韓の孤児

 飢餓によって国境を越えて中国に脱出した北韓難民の最新映像がこのほど、北韓の民主化の一環として飢餓のために中国に脱出した難民の支援活動を続けている「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク」(RENK、金英達代表)によって公開された。

 今年8月に撮影された映像は、中朝国境沿いにある北韓・咸鏡北道の茂山の闇市場。難民孤児たちが闇市場の中で食糧を求めてさまよっている状況が映し出されている。


■脱出失敗した死体

 闇市場を徘徊する難民孤児たちは、栄養失調からか一様にお腹が張り、着の身着のままの状況だ。腹水がたまった孤児たちが冷麺の汁を物乞いしている姿も映し出されている。

 同映像は北韓出身の金弘氏(仮名)によって撮影された。金氏は98年に北韓から中国に脱出、以来数度にわたって北韓と中国を往来している。北韓から脱出した際にコリアプレスの金容昇氏と出会い、茂山の撮影を決意したという。

 映像の解説に当たったのは今夏、中朝国境付近を訪れていた李英和RENK事務局長。李氏の情報によると、最近は中国側による北韓難民の取り締まりはますます厳しくなっており、北韓へ強制送還されれば3年の実刑を受けるという。

 また、これまでは北韓の国境警備兵は越境者を見つけても銃撃しなかったが、現在は致命傷を与えなければ銃撃してもよいと指示されていることも伝え、中朝ともに北韓難民の取り締まり強化に乗り出していることをうかがわせた。


栄養失調からか、孤児たちの腹は
一様に張っていた

■国境付近の警備強化

 4月中旬からは国境付近には脱出者を防止する鉄条網の柵も構築されている。このため、豆満江でもより警備の少ない川幅が広く流れの速い場所からの脱出を試みる人が多くなり、中には失敗しておぼれ死ぬ脱出者もいるという。

 また、脱出者の証言によると、北韓の今年の農作物についても、春先の降雨量の少なさと夏の台風によって、相当苦労するだろうと言う証言が得られたという。一方、中国側は50年来の大豊作だという。国境を隔てただけで北韓側のトウモロコシ畑は実りが少ない状況が見て取れたという。


■越境者、銃撃で厳重取り締まり

 中朝貿易についても、最近は北韓側から中国へ輸出する物資がなく、落ち込みが激しいという。輸出物資は木材ぐらいで、それも中国側がガソリンや機械など一切合切を提供して伐採した木材を輸入する状況にある。しかし、伐採した木材もきちんと中国に運ばれない場合もあるようで、中国側では丸損を被ってまで北韓との貿易を続ける状況にはなく、中朝貿易の落ち込みを加速させているともいう。


北韓からの脱出ならず、豆満江に浮かぶ死体

■RENK「難民認定」を要請

 RENKによると、中国側に脱出し、中国で生活している北韓難民は五万人を超え、中国と北韓を行き来している難民も十万人を超すという。

 これら難民に対して中国側の摘発も強化され、多くの難民がおびえて暮らしている状況だと明らかにした。

 RENKでは、北韓からの脱出者を難民と認定してもらうため、17日には一次分の署名を携えて国連高等難民弁務官に提出し、難民認定を求めた。


■決死の北韓脱出を綴る
 北韓孤児兄妹が手記発刊

 北韓から中国へ脱出した難民孤児が自らの体験を綴った手記『いのちの手紙〜北朝鮮難民孤児―ソニとチュンシク』が22日、日本語訳で発刊された。

 同書は、両親の死と飢餓によって北韓から中国に脱出せざるを得なくなった北韓の難民孤児・朴善姫と春植兄妹が難民孤児の現状を国際社会に訴えた手記。幼くして母を亡くし、追うように事故で父を亡くした兄姉は、伯父の家に預けられた。だが、食糧難から兄姉を養えず、追い出された2人は飢えと寒さに耐えながら穴ぐら生活をおくる。

中朝国境地帯に設けられた柵の前を警らする警備兵

 決心して豆満江をわたって中国へ逃げたものの、中国当局の取り締まりにあって北韓へ戻されてしまう。しかし北韓では食べていくこともできず再三中国への脱出をくり返し、現在は四度目の脱出に成功して中国で暮らしている。

 北韓からの脱出者は近年急増し、中国での取り締まりが強化されている中、2人は息をセンめてびくびっくしながら暮らしている。

 「どこへ行けば、飢えることもおびえることもなく、安心して生きることができるんだろう」。行き場がない2人が絶望的な将来を語る。

 世界に知ってもらいたいと後半部分は英語抄訳も加えられている。日本語訳はRENKの李英和事務局長が担当した。発行はザ・マサダ。定価1400円(税別)。連絡先は、電話03―3262―5670。

(1999.09.22 民団新聞)



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