民団新聞 MINDAN
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キムチの国際規格化めぐりシンポ

「自然発酵こそが生命」



東京で開かれたキムチ・シンポジウム

■市民の声「もどき」(日本式)に待った

 キムチの国際規格をめぐり、このままでは発酵を伴わない添加物だらけのキムチ風漬け物が「キムチ」として認定されてしまいかねない、と危惧を抱く在日同胞らが「キムチの生命」と題するシンポジウムを17日、在日韓国YMCAで開いた。

 シンポでは、参加した120余人の生産業者、小売り販売業者、一般消費者など様々な立場からの意見が続出する中で「キムチの生命は自然発酵にある」との認識から、消費者に対する広報活動を続けていこうとする動きが高まった。


■発酵の表示、制度化を

 シンポを開いたのは、キムチをはじめ韓国から食材などを輸入する業者で構成された在日本韓国食品協議会(金永悦会長)。またこのテーマを最初に報道した月刊『焼肉文化』(朴健市社長)が後援となった。

 自然発酵した乳酸菌、ミネラルたっぷりの本物のキムチが、添加物によって本物とはかけ離れた「モドキ」が「キムチ」として日本や世界に広がるのを見ていられない、というのが動機だ。本物のキムチを認定させるために韓日両国に働きかける土台づくりをしたいと開催した。

 パネルディスカッションには塩川恭子(「食の大学」代表)、金永悦会長、山中進(イラストレイター/エッセイスト)、藤崎正人(マルキュウ販売株式会社社長)、姜恩順(有限会社第一物産社長)の五氏が参加した。それぞれ漬け物や食品の専門家だ。


◆生産者保護のため

 韓日の食べ物比較に関する著書も出している山中さんは「日本的な規格でひとくくりにした場合、日本ではキムチは白菜キムチだけといった考え方が一人歩きしてしまう」と批判した。「合意案は生産者保護のためのものであり、消費者が自然発酵かそうでないかを判断できるように制度化すべきだ」とした。


◆添加物はこじつけ

 金会長は「温暖なため腐敗防止だとか、浅漬けを好むために、深い自然発酵の前に酸味や味を出す目的でと説明しているが、日本よりももっと気温の高いロサンゼルスやアフリカ、そして日本でも昔から韓国の伝統的な方法で作られている。日本側の言い分はこじつけ」と批判した。


◆発酵しないキムチ?

 キムチの生産・販売に30年以上の実績を持つ姜さんは「浅漬けキムチはあってもよいが、浅漬けなら浅漬けとして作るべきであって、浅漬けでは自然発酵のような味が出ないからといって、添加物で味を付けたものまでもキムチとして認めてしまうのには怒りをおぼえる」という。

◆発酵こそが生命

 日本の漬物会社に長年勤め、日本の工場のキムチの作り方にも詳しい藤崎さんは、「日本のスーパーなどで売られているキムチは賞味期限があり、キムチ本来の発酵を促す暇などない。キムチは発酵が生命だ」と強調し、「発酵という根本のところで共通していれば、韓日で作り方のレシピが違ってもよいが、韓国産と日本産とは明確に区別をすべきだ」と強調した。


◆添加物加えぬ方向へ

 「おいしくて安全な食べ物を食卓に」消費者の立場から「食の学校」を主宰する塩川さんは「添加物は入っていない方がいいし、なくしていこうとしているのが世界の趨勢」と強調した。


◆「キムチサミット」を設置へ

 パネルディスカッションでは、一般参加者も積極的に質問、主張を述べたが、パネリストたちは今後、「キムチの生命は自然発酵」の声をより広く一般消費者に知らせるため、「キムチサミット」のようなものを設置、持続的な活動を展開していくという。


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キムチ国際規格への経過
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 国際食品規格委員会(CODEX)で韓日両国によるキムチの国際規格づくりが始まったのは、日本の生産・輸出量急増に対する韓国側の危機感、韓国が提議した企画案が通れば日本の工場生産キムチはキムチではなくなってしまうという日本側の危機感が相まったから。

 韓日両国の合意内容は、(1)発酵海産物(塩辛など)は任意の材料とする(2)食品添加物として糊料(粘増剤)や餅米粉、小麦粉の使用を認める(3)添加物として乳酸、クエン酸の使用を認める(4)天然色素としてパプリカの使用を認める(5)調味料としてしょうゆを使用してもよい―の5項目からなっているが、(2)から(5)まではいずれも韓国では使用していない。

 日本の大手メーカーでは漬け込み原料、調味料として12種類以上の添加物を使用しているものもあるという。合意内容の添加物のうち乳酸とクエン酸、糊料は自然発酵させない日本型キムチの発酵を装うためのものであり、自然発酵によるうま味が出ないため味付けとしてしょうゆを使うことを目的としている。

 両国の合意内容は結局、(1)韓国政府が従来の立場を翻して日本の浅漬けもキムチとして認め(2)乳酸菌や様々なうま味成分が出るキムチ本来の第2次発酵を、化合物で発酵を装い、味付けしたものもキムチとした(3)業者保護という日本の商業ベースの意見が通ってしまったことを意味する―と指摘する。

 合意案に対して韓国側は一切ノーコメントを通しており、国民はその内容も全く知らされていない。一方、日本政府は「韓国側が譲歩してくれた」と受けとめており、全く対照的な姿勢を見せている。

(1999.10.27 民団新聞)



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