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カヤグム人間国宝・金竹坡

10周忌を機に開催



カヤグム、チャンゴ、ヘグムの
散調が披露された(金石蘭氏撮影)

 全羅北道の全州市で10月八〜10日、散調フェスティバルが開かれた。

 全州は遠い昔、百済の都があったところだが、この町を象徴する豊南門や、韓国カトリックの聖地となっている殿洞地区には古い韓国家屋が密集している。市は来年、校洞一帯を伝統家屋保存地区に指定し、見る・聞く・食べるなど、文化を体験できる町づくり構想を進める予定だという。


■古都・全州に幽玄の響き

 フェスティバルはこの校洞地区を会場に、1日目は朝鮮王朝の太祖・李成桂の奉ってある慶基殿の木立の中で、2日目と3日目は600年という韓国家屋を茶屋にした"茶門"の中庭と、散調通りと名づけられた路上の仮設舞台で行われた。

 散調は1980年頃、金祥祚によって創られたソロ楽器による音楽のスタイルで、ゆっくりとしたテンポから徐々に早いテンポへと移行していき、即興性を持っているのが特徴。それまでの音楽は"聞かせるためのもの"つまり貴族の宴や儀式に奏でるものだったが、散調は自分の感情を素直に表現した音楽だった。そのため、最初は卑しい音楽と蔑まれたが、この100年の間に、芸術の域にまで高められた庶民の音楽だ。


■在日2世の康貞子さんがプロデュース

 今回のフェスティバルをプロデュースしたのは、静岡市出身の在日二世、康貞子さんだ。康さんはソウル音大と武蔵野音大大学院でピアノを専攻したが、散調がクラシック音楽のバイオリンやチェロの無伴奏ソナタに決して劣らない音楽だと気づいた。

 そして15年ほど前から、散調をはじめとする韓国の伝統音楽や、名手と呼ばれる演奏家を日本に紹介してきた。


■世界化めざしフェスティバル

 カヤグム散調の人間国宝、故金竹坡が亡くなってちょうど10年になる。金竹坡を母とも慕った康さんは、10周忌にあたる今年、散調をさらに発展させ、世界化させるためにフェスティバルを企画したという。

 公演はオリジナル散調に始まり、マリンバ、シタール(インド楽器)、電子オルガン、アルトサックスといった外国の楽器による散調音楽の模索。そして独奏楽器によるといった概念から離れ、カヤグム、コムンゴ、ヘグムの三つの楽器による新しい散調への挑戦など、散調音楽の持つ可能性を余すところなく見せた。

(1999.10.27 民団新聞)



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