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河正雄文芸協会長寄贈の683点

韓国光州で美術展



■在日の生き様伝えたい
 本国・在日・日本をつなぐ財産に

 【光州】在日韓国人文化芸術協会の河正雄会長は3日、光州市立美術館で自身が寄贈した683点の美術作品を一般に公開する「河正雄コレクション―祈〓の美術展」のテープカットを行った。

 地元光州市の美術関係者や行政、報道関係者さらにソウルや日本からかけつけた親族、友人らを前に「在日同胞の生きた歴史、その哀しみが描かれている作品は、在日と日本、本国のみなさんをつなぐ財産であり、宝物であることを確認してほしい。みなさんに愛され、この地で永遠に生きてゆけるように」と心情を吐露した。同美術展は11月30日まで展示される。

 河会長は去る93年7月21日に在日同胞の作家6人の作品、212点を同美術館に寄贈した。当時の車鐘甲館長からの申し入れを受けたもので、「在日同胞の文化を守り伝え、その生き様を本国の人たちにきちんと伝え、理解してほしい」との一念からだった。美術館に河正雄記念室が設けられた。

 さらに今年4月14日に寄贈した471点を合わせ、127人の作家による683点が今回一挙に展示された。30年以上にわたる収集作品が、光州市立美術館で実を結んだことになる。

 主な作品は差別と圧迫を受けてきた全和凰ら在日同胞の「恨(ハン)」を描いたものだが、中にはピカソやアンディ・ウォーホールなど、世界的に認められた作品も含まれている。お祝いのために光州入りした彫刻家の高田悟さん(武蔵野美術大学講師)も作品の寄贈を特別に申し出た。4日には東京国立近代美術館首席学芸員の千葉成夫さんが、今回の美術展の意義について市民の前で講演するなど、その偉業を讃えた。

 もともと絵描き志望だったが、貧困ゆえに夢は挫折した。だからこそ、作品の収集テーマは一貫している。それは美術展のタイトルにもなった「祈り」だ。人間として生きること、人権の尊さが認められること。「2人の娘を光州に嫁がせた。暖かく受け入れてほしい」と、わが子のように愛しい作品群が多くの人に鑑賞され、「芸郷」と言われる光州の中で生き続けることを願う。美術作品は時代の生き証人だからだ。

 20年近く住んだ秋田県田沢湖畔に美術館ができたら寄贈しようと思っていたが、それよりも73年に父母の故郷、全羅南道霊岩を父母と初めて訪ねたことが深く心に残っていたという。45年ぶりに帰郷を果たした父は、「郷里で田んぼを耕し、静かに暮らしたい」と望郷の思いを切々と訴えながら75年に他界した。旅だった父の魂は故郷に近い光州でこそ生かされると思った。

 セレモニーの3日は自身が還暦を迎えた日でもあり、自ら歓迎パーティを願い出て二重の喜びを多くの人とわかちあった。その輪の中には、母の金潤金さんや夫人の尹昌子さんら家族、下関の金教元さんら親族のほか、光州盲人福祉会館建立事業の発起人として参与し、共に汗を流した関係者の姿があった。

 地元の秋田県からも小学時代の校長先生で、今は角館町の教育長を務める奥田敦夫さんや田沢湖町にある財団法人民族芸術研究所の茶谷十六さんらが秋田民謡で祝宴を盛り上げた。

 河会長はまた、「人とスペース」をテーマに2000年3月29日から6月7日まで開催される光州ビエンナーレの組織委員会企画委員の一人だ。「共に生きる」「共に仕事をしよう」をスローガンに、東奔西走の日々がこれからも続く。還暦は一つの通過点に過ぎない。

(1999.11.10 民団新聞)



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