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「同胞戦傷元軍属に年金を」

有志ら、特別立法求め声明



差別を無くしてほしいと訴える姜富中さん

■一時金だけでは不十分

 金敬得弁護士をはじめとする在日韓国人と日本人の学者、弁護士有志が「在日」の戦傷元軍属を特別立法で救済するよう求める声明を発表、11月24日、日本政府と各党に要請した。賛同人名簿には大学教授、文化人ら112人が署名している。

 声明では、韓日の狭間に置かれていずれからも何らの補償を受けられずにいる在日同胞戦傷元軍属が70歳代後半と高齢化している点を挙げ、まずは1日も早く援護法、恩給法を改定し日本人同様の年金を支給するよう求めているのが特徴。

 この問題について日本政府は、「見舞金」などの名目で一時金を支給することを検討しているという。しかし、声明の中で問題解決への「基本的枠組み」として提案しているのはあくまで「差別的取扱い」の解消であり、援護法への正当な位置づけだ。間接的ながら日本政府の一時金だけでは問題の解決にならないと訴えている。

 在日同胞を原告とする一連の戦後補償裁判ではいずれも敗訴の結果に終わったが、付言では強く国に解決を促してきた。

 特に10月15日の大阪高裁判決は、日韓請求権協定締結によって在日同胞戦傷元軍属が韓日のいずれからも何ら補償を受けられなくなった時点からは憲法14条(平等条項)に違反する疑いが生じ、国際人権規約を批准して以降は差別的取扱いを禁じた自由権規約26条に違反する疑いが生じたと指摘していた。


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◆解説◆

■援護法適用が先

 日本政府は旧日本軍の軍人・軍属に対して、200万円を基準に一時金を支給する方針だという。来年1月召集の通常国会に関連法案を提出し、2000年中の支給開始を目指していると伝えられる。今年3月、野中広務官房長官(当時)が「20世紀の残された問題を今世紀中に解決しなければならない」と表明したことで、日本の外政審議室で検討を急いできた。

 日本人として戦争に協力させられ心身に傷を負った在日韓国人は、肉体的ハンディのため思いどおりの職業に就けないできた。しかたなく生活保護を受け、最低限の生活をしいられているというケースも多い。それだけに「気持ち程度」とはいえ、一時金が支給されるのは一歩前進だ。しかし、それだけで当事者が納得するだろうか。

 姜富中さんは「日本人と同等の年金だけは譲れない一線」と繰り返してきた。援護法に基づく地位確認を求めての裁判闘争のさなか94年5月になくなった戦傷元軍属の陳石一さんの無念を思えば、「陳さんから笑われるようなことはしたくない」という。

 生活に追われ続け、姜さんが日本人と差別されていることに気づいたのは、戦後20年以上たってからだった。姜さんと同じように戦争で右手を失った元日本兵が年間数百万円もらっているのを知り、驚いた。「同じ日本人として、日本のため最後まで戦ったのに、なぜなんや…」。一時金より先に「差別をなくして」という。

 一時金の金額自体も、本来受け取っていたであろう年金額に比べればあまりにかけ離れている。障害の程度からして第4項症に相当する陳石一さんは、援護法に基づく年金支給が開始された1952年以降94年3月までの累計で4418万円1413円が支給されなければならなかった。

 せめて「対応の遅れたことについて、何らかの方法で遺憾の意を表明する」(「基本的枠組みに関する提案」、声明から)のでなければ、50年近く補償から取り残されてきた当事者の無念の気持ちを晴らすことはできまい。

(1999.12.01 民団新聞)



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