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慶州で実兄妹と61年ぶり再会

墓参団で和歌山の林長吉さん



61年ぶりに兄(左)
との再会を喜ぶ林さん。

■町会議員の協力実を結ぶ

 【和歌山】1930年代に渡日し、土木工事などに従事しながら歳月を過ごした和歌山の同胞1世が、このほど実施された秋季母国訪問団に参加し、日本の町議会議員の仲立ちもあって61年ぶりに実の兄と妹との再会を果たした。

 この同胞は和歌山県日高郡に住む林長吉さん(83)。林さんは22歳の頃に近隣の青年たちと一緒に、半ばだまされたような形で長崎の佐世保に渡ってきた。大志を抱いてきたものの、日々の仕事は土砂を運んで道路づくりをする過酷な労働で、賃金や食事もまともなものではなかったという。

 その後、山口、広島を経て53年に和歌山地方を襲った大水害の復旧工事のために10数人の作業員とともに印南町に入り、復旧作業に従事した。当時、飯場として借りたのが今回の訪韓を仲立ちした藤本良昭さん(56)の父。

 広い田畑を所持していた藤本さん宅では、農繁期には林さんらに手伝ってもらって過ごしていたという。復旧工事が終わった後も居残る形となった林さんに対して、「今の自分があるのはこの人のおかげ」と家の諸般にわたって助けてられてきた恩義に報いようと家族同然で同居するようになった。

林さん(中央)を中心に
兄妹家族と藤本さん(右側)

 韓国籍ではあるが、民団、朝鮮総連ともつながりはなく、長い間日本社会で居住してきた。故郷を訪問しようにも林さん自身がどこに住んでいたのか明確に分からず、国の肉親とも連絡は途絶えていた。

 今回の母国訪問団も、藤本さんが同行し、肉親探しに奔走した。公式日程を終えた7日に、慶州とだけ覚えていた故郷に入った。ガイドが調査したところ、実の兄妹が生存していることが分かり、慶州で61年ぶりの再会を果たした。

 現在、印南町会議員でもある藤本さんは「肉親と再会できたのは自分のことのように嬉しい。会いたいという強い願いがこのような形で実現したのでは」と感慨もひとしおだ。

(1999.12.01 民団新聞)



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